減衰振動 : 力学的エネルギー (mechanical energy)
x
軸上を単振動する質量
m
の質点に速度
v=
dx
/
dt
に比例する抵抗力が作用するときの運動方程式
m
d2x
dt2
=−cx
−bv
(
c
,
b
:正定数)
- - - (1)
に従う減衰振動では,質点の運動エネルギー
K=12
mv2
と
x=0
を基準点とした位置エネルギー
U=12
cx2
との和である力学的エネルギー
E=K+U
=
12
mv2
+
12
cx2
- - - (2)
が,抵抗力の作用により時間の経過とともに減少するため保存しない(散逸関数).
ω0=
c/m
と
γ=
b/2m
の関係に応じた3つの場合(不足減衰,過減衰,臨界減衰)について,この力学的エネルギーを考える:
(i)
γ<
ω0
の場合(不足減衰)
位置:
x=A
e−γt
cos(ωt+α)
(
A
,
α
:定数)
- - - (3)
速度:
v=
dx
dt
=−A
e−γt
{
γcos
(ωt+α)
+
ωsin
(ωt+α)
}
=−Aω0
e−γt
cos
(ωt+β)
- - - (4)
ここで,
β
は次の2式を満たす角度である.
cos(α−β)
=
γω0
,
sin(α−β)
=
ωω0
運動エネルギー:
K=12
mv2
=12mA2
ω02
e−2γt
cos2
(ωt+β)
=14cA2
e−2γt
{
1+cos2
(ωt+β)
}
- - - (5)
位置エネルギー:
U=12
cx2
=12cA2
e−2γt
cos2
(ωt+α)
=14cA2
e−2γt
{
1+cos2
(ωt+α)
}
- - - (6)
力学的エネルギー:
E(t)=
14cA2
e−2γt
{
2+
cos2
(ωt+α)
+
cos2
(ωt+β)
}
=
12cA2
e−2γt
{
1+
cos
(
2ωt+α+β
)
cos
(α−β)
}
=
12cA2
e−2γt
{
1+
γω0
cos
(
2ωt+α+β
)
}
- - - (7)
例として,
m=1.0 kg
,
ω0
=0.30
s-1
,
γ=0.084
s−1
,初期条件
x0=
1.0 m
,
v0=
0 m/s
の場合について,質点の位置
x(t)
と力学的エネルギー
E(t)
のグラフを示す.この場合,
c=0.090
N/m
,
ω=0.288
s-1
,
β=−π/2
である.
2つの新たな変数
X
,
V
を次のように定義する.
X≡
c2
x
=
E0
e−γt
cos
(
ωt+α
)
- - - (8)
V≡
−m2
v
=
E0
e−γt
cos
(
ωt+β
)
- - - (9)
ここで,
E0
=
mω02
A2
/2
=
cA2
/2
である.式 (5),(6) より
V2
=K
,
X2
=U
なので,
X2
+
V2
=
E(t)
- - - (10)
となり,
E(t)
の値は時間とともに減少するので,
XV
平面(規格化された位置
X
と速度
V
の位相空間)において,点 P
(X,V)
は原点に収束していく渦巻曲線を描く(図は上の例の場合の渦巻曲線を示す).
V=−
dX
dt
および式 (1) より
dV
dt
=
ω02X
−2γV
なので,
dV
dX
=
dV/dt
dX/dt
=−
ω02
XV+2γ
- - - (11)
となる.したがって,原点から引いた直線(
比
X/V
が一定
)と渦巻曲線との交点における接線の傾きは,どの交点でも同じになる.
(ii)
γ>
ω0
の場合(過減衰)
位置:
x=
e−γt
(
c1
eηt
+
c2
e−ηt
)
(
c1
,
c2
:定数)
- - - (12)
速度:
v=
dx
dt
=−
e−γt
{
(γ−η)
c1
eηt
+
(γ+η)
c2
e−ηt
}
- - - (13)
運動エネルギー:
K=12
mv2
=12m
e−2γt
{
(γ−η)
c1
eηt
+
(γ+η)
c2
e−ηt
}2
=12m
e−2γt
{
(γ−η)
2
c12
e2ηt
+
(γ+η)
2
c22
e−2ηt
+2ω02
c1c2
}
=12c
e−2γt
{
(
γ−η
ω0
)
2
c12
e2ηt
+
(
γ+η
ω0
)
2
c22
e−2ηt
+2c1c2
}
- - - (14)
位置エネルギー:
U=12
cx2
=12c
e−2γt
(
c1
eηt
+
c2
e−ηt
)
2
=12c
e−2γt
(
c12
e2ηt
+
c22
e−2ηt
+2c1c2
)
- - - (15)
力学的エネルギー:
E(t)=
12c
e−2γt
[
{
(
γ−η
ω0
)
2
+1
}
c12
e2ηt
+
{
(
γ+η
ω0
)
2
+1
}
c22
e−2ηt
+4c1c2
]
=c
e−2γt
{
γω0
(
γ−η
ω0
)
c12
e2ηt
+
γω0
(
γ+η
ω0
)
c22
e−2ηt
+2c1c2
}
- - - (16)
例として,
m=1.0 kg
,
ω0
=0.30
s-1
,
γ=0.78
s−1
,初期条件
x0=
1.0 m
,
v0=
0 m/s
の場合について,質点の位置
x(t)
と力学的エネルギー
E(t)
のグラフを示す.この場合,
c=0.090
N/m
,
η=0.72
s-1
である.
2つの新たな変数
X
,
V
を
X≡
c2
x
,
V≡
−m2
v
と定義すると,
X2
+
V2
=
E(t)
となり,
XV
平面(規格化された位置
X
と速度
V
の位相空間)において,点 P
(X,V)
は図のような曲線を描き,速やかに原点に収束していく(図は上の例の場合).
(iii)
γ=
ω0
の場合(臨界減衰)
位置:
x=
(
c1
+
c2t
)
e−γt
(
c1
,
c2
:定数)
- - - (17)
速度:
v=
dx
dt
=−
{
γ(
c1
+
c2
t)
−
c2
}
e−γt
- - - (18)
運動エネルギー:
K=12
mv2
=12m
{
γ(
c1
+
c2
t)
−
c2
}2
e−2γt
=12m
e−2γt
{
γ2
(
c1
+
c2
t
)
2
−2γc2
(
c1
+
c2
t)
+c22
}
=12c
e−2γt
{
(
c1
+
c2
t
)
2
−2
c2ω0
(
c1
+
c2
t)
+
(
c2ω0
)
2
}
- - - (19)
位置エネルギー:
U=12
cx2
=12c
(
c1
+
c2t
)
2
e−2γt
- - - (20)
力学的エネルギー:
E(t)=
12c
e−2γt
{
2
(
c1
+
c2
t
)
2
−2
c2ω0
(
c1
+
c2
t)
+
(
c2ω0
)
2
}
=c
e−2γt
{
(
c1
+
c2
t
)
2
−
c2ω0
(
c1
+
c2
t)
+
12
(
c2ω0
)
2
}
- - - (21)
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