ベクトルのモーメント (moment of vector)
点 P を始点としたベクトル
A
があり,点 O から引いた点 P の位置ベクトルを
r
とすると,ベクトル
A
の点 O のまわりのモーメントは
M
=r
×
A
- - - (1)
で定義される.上式のようにベクトル
r
と
A
のベクトル積(外積)で定義されるので,
A
の始点を O に平行移動し,
r
からその平行移動した
A
に向かって
θ
回転するときに右ネジが進む方向が
M
の方向であり,
r
と
A
で張られる平行四辺形 OPQR(淡緑の面)に垂直である.図のように右手を握りこむ向きを回転の向きにとると,右ネジの進む方向は親指の方向に対応する.ベクトルのモーメントを図示する場合,通常,図のように点 O を始点としたベクトルで表す(位置ベクトル
r
の始点をベクトルのモーメントの始点とする).
また
M
の大きさは平行四辺形 OPQR の面積に等しく
|M|=
|r|
|A|
sinθ
- - - (2)
となる.
このように,ベクトルのモーメントは,そのベクトルの始点の位置に依存するため,同じベクトル量でも位置が異なればそのモーメントは異なるものになる.また,点 O とは異なる点 O' から点 P に引いた位置ベクトルを
r′
とすると,ベクトル
A
の点 O' のまわりのモーメントは
M′
=r′
×
A
- - - (3)
となり,どの点のまわりのモーメントを考えるかによってベクトルのモーメントは異なるものになる.通常,ベクトルのモーメントの概念が出てくるのは回転運動を取り扱う場合であり,回転中心のまわりのモーメントを考えることが多い.
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