力のモーメント : 異なる座標原点 (different origin)
力のモーメントの定義には質点の位置ベクトルが関与しているので,一般には,位置ベクトルの始点が異なれば,質点に作用する力が同じであっても力のモーメントは(大きさも方向も)異なる. つまり,力のモーメントは座標原点の選び方に依存する.
点 P にある質点に力
F
が作用するとする.点 O から点 P に引いた位置ベクトルを
r
,点 O からベクトル
a
だけ隔てた点 O' から点 P に引いた位置ベクトルを
r′
とすると,
r=
r′
+a
- - - (1)
の関係がある.このとき,点 O のまわりの質点の力のモーメントは
N
=r
×
F
- - - (2)
であり( 図(a) ),点 O' のまわりの質点の力のモーメントは
N′
=r′
×
F
- - - (3)
である( 図(b) ).この図において,点 O から直線 PQ に下ろした垂線の長さ
l=
|r|
sinθ
は,点 O' から下ろした垂線の長さ
l′=
|r′|
sinθ′
と比べると,
l>l′
なので,各々の力のモーメントの大きさ
N=lF
,
N′
=
l′F
について,
N>N′
となり,点 O のまわりの力のモーメントの大きさ
N
は点 O' のまわりの力のモーメントの大きさ
N′
に比べて大きい.力のモーメントの大きさは物体を回転させようとする能力を表す量といえるので,同じ力
F
であっても,点 O' のまわりに回転させようとする効果よりも点 O のまわりに回転させようとする効果の方が大きいということである.
式(1)を式(2)に代入し,式(3)を用いると,
N
と
N′
の関係は
N=
(
r′
+a
)
×F
=
r′
×F
+
a×F
=
N′
+
a×F
- - - (4)
である.
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