実験レポートの書き方 (How to write an experimental report)

● 実験レポートの目的

実験で行った内容や成果を他の人に伝え,理解してもらうことが実験レポートを書く目的である.また,どんな実験もその結果の再現性が担保されている必要があるため,結果を整理して記録として残すべき内容を精査し,読み手のために分かり易く書くことが大切である.科学的に根拠のある文章であるべきことを常に意識し,順序だった論理性・客観性のある表現,正確な記述を心掛ける.

● レポートの形式

一般に,レポートを書くのは,一連の実験が終わり,実験データの解析結果が得られてからとなる.レポートは,[1] 何の目的のために,[2] どのような原理・理論背景の下,[3] どのような測定を行い,[4] 得られたデータをどのように解析して結果を導き出したか,[5] その結果をもとにどのような考察を行って [6] 結論として纏めたか,という事柄が整理されて,他の人に分かり易く記述されている必要がある.そのため,以下に示すようなセクションに分けて書くとよい(必ずしもこの通りでなければならないわけではない).

  1. 実験の目的

    実験の目的や意義を明確に記述する.何を観測することによって,どういう知見が得られるかなどを書く.また,自分なりの視点や独創性がどこにあるも書くとよい.

  2. 原理・理論

    実験の原理や関連する理論を簡潔に説明する.どのような理論的背景でどのような仮説に基づいて実験を行うか,また,何を観測すればどのような原理によって何が説明できるのかなどを書く.

  3. 実験方法・装置

    使用した装置や器具の説明,測定方法や手順および実験条件などを詳細に記述する.実験で使用したすべての装置・器具の名称,定格番号などや,必要であれば使用した理由なども書く.また,誰でも実験が再現できるように,実験の手順を詳細に書く.実験条件については,日時,天候,気温,気圧,湿度などの環境データを記す.特に実験結果に影響すると思われる重要な条件については,実験前後のデータ,時間がかかる実験の場合は途中のデータも記すとよい.

  4. 実験結果

    実験で得られたデータを整理し,観測結果を適切な表やグラフを用いて表す.測定値については,測定器自体がもつ精度や有効数字を考慮して,単位が分かるように記入する.グラフの作成の仕方については,ここを参照するとよい.

  5. 考察

    実験結果を解釈し,理論との整合性を検討する.その際,実験上の問題点や誤差要因を分析する.得られた結果を定量的に評価し,理論とのずれの割合が測定精度よりもかなり大きい場合は誤差の原因を考察する.考察においては科学的な根拠をもって記述し,当てずっぽう(当て推量)的な記述は避けるべきである.また,手順に沿って実験を行えば,原理・理論的背景が分からなくても当然何らかの結果は得られるため,実験では結果を出すだけでは十分ではなく,それを基に考察することが重要である.独りよがりの感想文・反省文にならないように気を付ける.

  6. 結論

    実験の目的に対する結論を簡潔にまとめる.実験の目的で述べた事柄に照らし合わせ,実験データの解析結果から客観的に結論を述べる.もし,自身の仮説や予想に反する結果になったとしても,結論を恣意的に導いてはならない.

  7. 参考資料・引用文献

    参考にした資料や引用した文献を,通し番号を付けるなどして適切な形式で列挙する.インターネットのサイトなどを参考にした場合も同様に,URLや参照日とともに列挙する.本文中で引用している箇所には,文献番号を提示するとよい.他の人の発想や考えの出所を明示した上で,自身のレポートの独自性を主張することが大切である.

  8. 共同実験者・役割分担

    共同で実験を行った者がいた場合,協力した人の名前を挙げ,自分を含めてそれぞれの役割分担を明確に記述する.また,他の人から助言などを受けた時も,だれからどのようなことを助言されたかを明記するとよい.

● 実験レポート作成で重要なこと

実験や解析の内容もさることながら,レポート自体が分かり易く纏められているかが重要な点である.グラフや模式図・写真などを効果的に利用して,他の人が見ても分かり易く表現することで,その内容がしっかり伝わる.また,レポートは,その完成度だけでなく,自身の創意・工夫が現れていることも大切である.様々な文献やインターネットのサイトを参考にしたり,他の人と議論したとしても,レポートをまとめる段階において,自分の考えに基づいて自分の言葉で記載し,自身の独創性が読者にはっきり伝わるように書く必要がある.


<参考> 田中忠芳,第1チャレンジ 実験課題レポートの書き方,JPhO News Letter No. 11, p. 6 (March 2015)


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