剛体の回転軸のまわりの慣性モーメントが大きいほど,その剛体は回転しにくい.したがって,斜面を滑らずに転がる場合,重心を通る回転軸のまわりの慣性モーメントが大きい剛体ほど遅く転がり落ちる.これらの剛体の,重心を通る回転軸のまわりの慣性モーメントを小さい順に並べると,
2
5
M
R
2
(球)
<
1
2
M
R
2
(円柱)
<
2
3
M
R
2
(球殻)
<M
R
2
(円筒)
となる.したがって,球,円柱,球殻,円筒の順に速く転がり落ちる.
より詳細に考えてみよう.
重心を通る回転軸のまわりの剛体の慣性モーメントを
IG
とすると,水平面とのなす角
β
の斜面を転がり落ちる剛体の重心の加速度
A [
m/s2]
は
A=
gsinβ
1+
IG
MR2
と表される.ここで,
g [
m/s2]
は重力加速度の大きさである.したがって,これらの剛体についての慣性モーメント
IG
を代入して,重心の加速度の大きい順に並べると
57
gsinβ
(球)
>
23
gsinβ
(円柱)
>
35
gsinβ
(球殻)
>
12
gsinβ
(円筒)
となる.つまり,重心の進む速さの順番は,半径
R [
m]
,質量
M [
kg]
に関係なく,剛体の形状で決まる.
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