t分布 シミュレーション教材

t 分布 シミュレーション教材

標準正規分布の乱数から t 統計量を作り,何度もサンプリングして得られるヒストグラムが,理論上の t 分布へと近づいていく様子を体験できるシミュレーション教材である.

●目次

  1. この教材の概要
  2. 使い方(操作手順)
  3. 画面の各部の説明
  4. 学ぶ内容
  5. 背後にある数式
  6. やってみよう(観察課題)

1 この教材の概要

t 分布(スチューデントの t 分布)は,母分散が分からないときに,標本から母平均を推定・検定するために使われる,統計学でとても重要な分布である.この教材では t 分布を「式として与えられたもの」ではなく,乱数から自分の手で作り出すことで理解する.

やることはシンプルである.標準正規分布に従う乱数をいくつか発生させ,それらを組み合わせて1個の t 値を作る.これを何千回・何万回とくり返してヒストグラムにすると,その形が理論上の t 分布の曲線にぴったり重なっていく.

●ねらい:「多数の乱数を集めると,決まった確率分布の形が現れる」という統計のいちばん大事な考え方を,目で見て確かめます.

t分布のExcel教材」をWeb ページで再現している.

2 使い方(操作手順)

  1. 自由度 n を決める
    「自由度 n = 」に 1~8 の整数を入れます(初期値は 4). n t 値をつくるときに使う正規乱数の個数で,分布の形を決める.
  2. 1回あたりの追加数を決める
    「サンプリング回数」に,ボタン1回で追加する t 値の個数を入れる(初期値は 1).
  3. サンプリングする
    「サンプリング」ボタンを押すと,指定した個数だけ t 値が発生し,ヒストグラムに積み上がる.まとめて増やしたいときは「+100」「+1000」も使える.
  4. グラフの変化を観察する
    サンプルが増えるほど,青いヒストグラムが赤い理論曲線(理論上の t 分布)に近づく.左の表では「直近のサンプル」の計算過程を確認できる.
  5. やり直す
    「初期化」ボタンで累積サンプリング回数を 0 に戻し,ヒストグラムを消去する.自由度 n を変えたときも自動でリセットされる.

3 画面の各部の説明

●操作パネル

項目 機能
自由度 n = t 値をつくるのに使う正規乱数の個数(1~8). t 分布の自由度そのもの.
サンプリング回数 ボタン1回で追加する t 値の個数.
サンプリング 「サンプリング回数」で指定した個数の t 値を発生させ,ヒストグラムに加える.
+100 +1000 一度に 100 個 , 1000 個の t 値をまとめて追加する.
初期化 累積回数を 0 に戻し,ヒストグラムを消去する.
累積サンプリング回数 これまでに発生させた t 値の総数.多いほどヒストグラムは滑らかになる.

●「直近のサンプル」の表

いちばん最後に発生した1個の t 値が,どう計算されたかを示す.

項目 意味
p i 0~1 の一様乱数(RAND にあたる値)
y i pi を正規分布の逆関数で変換した標準正規乱数
y i 2 y i を2乗した値
χ 2 y i 2 の合計(自由度 n のカイ2乗値)
x もう1つ独立に発生させた標準正規乱数
t この行から計算される t 値(下の数式を参照)

●グラフ

  • 青い棒(ヒストグラム)… 発生した t 値を階級幅 0.2 で数え,「相対度数 ÷ 階級幅」にした値.実験で得られた分布である.
  • 赤い曲線… 自由度 n の理論上の t 分布の確率密度関数.目標となる形である.

4 学ぶ内容

この教材を触ると,次のことが体験的に理解できる.

t 分布の成り立ち

t 分布は,標準正規分布とカイ2乗分布という2つの分布を組み合わせて定義されることが分かる.

自由度の意味

自由度 n を変えると分布の形(とがり方,すそ野の広さ)が変わることを,自分で確かめられる.

大数の法則的な収束

サンプルを増やすほどヒストグラムが理論曲線に近づく=多数回試行で分布が安定する様子が見える.

乱数と確率分布

一様乱数 → 正規乱数 → t 値,という変換の流れを通して,乱数から目的の分布を作る方法を学ぶ.

正規分布との違い

t 分布は正規分布よりすそ野が重く,自由度が大きくなると正規分布に近づくことに気づける.

ヒストグラムと密度

「相対度数 ÷ 階級幅」にすると,棒グラフと確率密度曲線を同じ土俵で比べられることを学ぶ.

5 背後にある数式

t 値の作り方

まず自由度 n と同じ個数の標準正規乱数 y 1 , , y n を発生させ,その2乗和をとる.これは自由度 n カイ2乗分布に従う量である.

χ 2 = y 1 2 + y 2 2 + + y n 2

さらにもう1つ独立な標準正規乱数 x を発生させ,次の量を計算する.これが自由度 n t 分布に従う.

t = x χ 2 n

つまり t 分布とは「標準正規変数 ÷ √(カイ2乗変数 ÷ 自由度)」として定義される分布である.一様乱数から標準正規乱数への変換には,正規分布の逆関数 NORM.INV(p, 0, 1) を使っている.

●理論上の確率密度関数(赤い曲線)

自由度 n t 分布の確率密度関数は次の式で表される(Γ はガンマ関数).

f x = Γ n + 1 2 n π Γ n 2 1 + x 2 n n + 1 2

なぜヒストグラムと重なるの?

青いヒストグラムは「相対度数 ÷ 階級幅」にしてあるため,全体の面積が 1 になり,確率密度と同じ尺度になる.だからサンプルが多いほど,実験のヒストグラムと理論の密度曲線が一致していく.

6 やってみよう(観察課題)

  • 収束を見る:自由度 n = 4 のまま+1000を何度も押し,累積回数が増えるほど棒が曲線にそろっていくことを確かめよう.
  • 自由度で形が変わる: n = 1 n = 8 でそれぞれ多数サンプリングし, n が小さいほどすそ野が広く(外れ値が出やすく)なることを比べよう.
  • 正規分布に近づく: n を大きくすると,山が高く・すそ野が狭くなり,正規分布に近い形になることを観察しよう.
  • 少数だとバラつく:「サンプリング回数 = 1」で少しだけ発生させると,棒がガタガタで曲線から外れることを確認しましょう.試行回数の大切さが分かる.
  • 計算過程を追う:左の表で y i χ 2 x t の関係を1行ずつ読み,式のとおりに計算されていることを確かめよう.

 

ホーム>>カテゴリー別分類>>統計>> t 分布 シミュレーション教材

最終更新日:2026年9月13日