分布 シミュレーション教材
標準正規分布の乱数から
統計量を作り,何度もサンプリングして得られるヒストグラムが,理論上の
分布へと近づいていく様子を体験できるシミュレーション教材である.
●目次
- この教材の概要
- 使い方(操作手順)
- 画面の各部の説明
- 学ぶ内容
- 背後にある数式
- やってみよう(観察課題)
1 この教材の概要
分布(スチューデントの
分布)は,母分散が分からないときに,標本から母平均を推定・検定するために使われる,統計学でとても重要な分布である.この教材では
分布を「式として与えられたもの」ではなく,乱数から自分の手で作り出すことで理解する.
やることはシンプルである.標準正規分布に従う乱数をいくつか発生させ,それらを組み合わせて1個の
値を作る.これを何千回・何万回とくり返してヒストグラムにすると,その形が理論上の
分布の曲線にぴったり重なっていく.
●ねらい:「多数の乱数を集めると,決まった確率分布の形が現れる」という統計のいちばん大事な考え方を,目で見て確かめます.
2 使い方(操作手順)
- 自由度
を決める
「自由度
」に 1~8 の整数を入れます(初期値は 4).
は
値をつくるときに使う正規乱数の個数で,分布の形を決める.
- 1回あたりの追加数を決める
「サンプリング回数」に,ボタン1回で追加する
値の個数を入れる(初期値は 1).
- サンプリングする
「サンプリング」ボタンを押すと,指定した個数だけ
値が発生し,ヒストグラムに積み上がる.まとめて増やしたいときは「+100」「+1000」も使える.
- グラフの変化を観察する
サンプルが増えるほど,青いヒストグラムが赤い理論曲線(理論上の
分布)に近づく.左の表では「直近のサンプル」の計算過程を確認できる.
- やり直す
「初期化」ボタンで累積サンプリング回数を 0 に戻し,ヒストグラムを消去する.自由度
を変えたときも自動でリセットされる.
3 画面の各部の説明
●操作パネル
| 項目 |
機能 |
| 自由度
|
値をつくるのに使う正規乱数の個数(1~8).
分布の自由度そのもの. |
| サンプリング回数 |
ボタン1回で追加する
値の個数. |
| サンプリング |
「サンプリング回数」で指定した個数の
値を発生させ,ヒストグラムに加える. |
| +100 ,+1000 |
一度に 100 個 , 1000 個の
値をまとめて追加する. |
| 初期化 |
累積回数を 0 に戻し,ヒストグラムを消去する. |
| 累積サンプリング回数 |
これまでに発生させた
値の総数.多いほどヒストグラムは滑らかになる. |
●「直近のサンプル」の表
いちばん最後に発生した1個の
値が,どう計算されたかを示す.
| 項目 |
意味 |
|
0~1 の一様乱数(RAND にあたる値) |
|
pi を正規分布の逆関数で変換した標準正規乱数 |
|
を2乗した値 |
|
の合計(自由度
のカイ2乗値) |
|
もう1つ独立に発生させた標準正規乱数 |
|
この行から計算される
値(下の数式を参照) |
●グラフ
- 青い棒(ヒストグラム)… 発生した
値を階級幅 0.2 で数え,「相対度数 ÷ 階級幅」にした値.実験で得られた分布である.
- 赤い曲線… 自由度
の理論上の
分布の確率密度関数.目標となる形である.
4 学ぶ内容
この教材を触ると,次のことが体験的に理解できる.
分布の成り立ち
分布は,標準正規分布とカイ2乗分布という2つの分布を組み合わせて定義されることが分かる.
自由度の意味
自由度
を変えると分布の形(とがり方,すそ野の広さ)が変わることを,自分で確かめられる.
大数の法則的な収束
サンプルを増やすほどヒストグラムが理論曲線に近づく=多数回試行で分布が安定する様子が見える.
乱数と確率分布
一様乱数 → 正規乱数 →
値,という変換の流れを通して,乱数から目的の分布を作る方法を学ぶ.
正規分布との違い
分布は正規分布よりすそ野が重く,自由度が大きくなると正規分布に近づくことに気づける.
ヒストグラムと密度
「相対度数 ÷ 階級幅」にすると,棒グラフと確率密度曲線を同じ土俵で比べられることを学ぶ.
5 背後にある数式
●
値の作り方
まず自由度
と同じ個数の標準正規乱数
を発生させ,その2乗和をとる.これは自由度
のカイ2乗分布に従う量である.
さらにもう1つ独立な標準正規乱数
を発生させ,次の量を計算する.これが自由度
の
分布に従う.
つまり
分布とは「標準正規変数 ÷ √(カイ2乗変数 ÷ 自由度)」として定義される分布である.一様乱数から標準正規乱数への変換には,正規分布の逆関数 NORM.INV(p, 0, 1) を使っている.
●理論上の確率密度関数(赤い曲線)
自由度
の
分布の確率密度関数は次の式で表される(Γ はガンマ関数).
なぜヒストグラムと重なるの?
青いヒストグラムは「相対度数 ÷ 階級幅」にしてあるため,全体の面積が 1 になり,確率密度と同じ尺度になる.だからサンプルが多いほど,実験のヒストグラムと理論の密度曲線が一致していく.
6 やってみよう(観察課題)
- 収束を見る:自由度
のまま+1000を何度も押し,累積回数が増えるほど棒が曲線にそろっていくことを確かめよう.
- 自由度で形が変わる:
と
でそれぞれ多数サンプリングし,
が小さいほどすそ野が広く(外れ値が出やすく)なることを比べよう.
- 正規分布に近づく:
を大きくすると,山が高く・すそ野が狭くなり,正規分布に近い形になることを観察しよう.
- 少数だとバラつく:「サンプリング回数 = 1」で少しだけ発生させると,棒がガタガタで曲線から外れることを確認しましょう.試行回数の大切さが分かる.
- 計算過程を追う:左の表で
,
,
,
の関係を1行ずつ読み,式のとおりに計算されていることを確かめよう.
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分布 シミュレーション教材
最終更新日:2026年9月13日