1次元( 軸上)のポテンシャル中を運動する質量 の量子に対するシュレディンガー方程式は次式となる.
Figure1のようなステップポテンシャル
において, の十分遠方 の粒子源からある運動量をもつ粒子を の正の向きに入射し続けている状況を考え,その定常状態(確率密度の空間分布が時刻に依らず変化しない状態)についてのシュレディンガー方程式の解を求める.
粒子のエネルギー が一定の定常状態の場合,シュレディンガー方程式の解は変数分離形 で表すことができ(変数分離),時間を含まないシュレディンガー方程式
・・・・・・(1)
を考えることができる.ここで,波動関数の時間依存部分 である. 解を と仮定して,(1)に代入すると,
[T]
のとき
より,
重ね合わせの原理より,
・・・・・・(2)
どちらに進む波かは, 依存の波動関数まで含めて考えないと分からない.
式の(2)の は入射波, は反射波に対応する.
[U]
のとき
より,
重ね合わせの原理より,
・・・・・・(3)
ステップポテンシャルに,左方( )から粒子を入射している場合, の領域では,入射波と反射波, の領域では,透過波のみの解になる (式(3)の ).したがって,解は次式となる.
原点
での境界条件より係数
,
,
の関係を求める.
シュレディンガー方程式は2階の微分方程式なので,その解と1次導関数は全領域で連続でなければならない.
波動関数
は原点
で等しくなるため
・・・・・・(4)
また,導関数
は原点 で等しくなるため
・・・・・・(5)
(4) (5) より
が得られ,この を式(4)に代入して
が得られる.よって,係数 , は を用いて
,
と表せる.ただし
,
[1]
の場合
入射波のエネルギーがポテンシャルのエネルギーより大きいとき,
は実数になる.したがって,入射波 の一部は反射し(反射波 ),一部は透過波 として, の領域に伝搬する(Figure2).Figure1に重ねて,波動関数の実部を波線で示した.縦軸はエネルギー,横軸は1次元座標の 軸を示す.
[2]
の場合
入射粒子のエネルギー
がポテンシャルのエネルギー
より小さいとき,
は虚数になる.透過波は
として, の領域で指数関数的に減衰する.したがって,入射波 は, の領域において指数関数的に減衰する(Figure3).この図でも,波動関数の実部を破線で示した.
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学生スタッフ作成
2025年8月5日