斜面を転がる剛体球
ある球(質量
M [
kg ]
,半径
R [ m ]
,慣性モーメント
I [
kg⋅
m
2
]
)が,水平からなす角
30°
の斜面の上を転がりながら落下した(図1).球がざらざらした斜面から受ける摩擦力を
F [ N ]
,垂直抗力を
N [ N ]
,球の重心の加速度を
A [
m/s
2
]
,回転の角加速度を
α [
rad/s
2
]
,重力加速度の大きさを
g [
m/s
2
]
とする.
(1)
球に作用する力を図1にすべて書け.
解答
(2)
重心の運動方程式を書け(これを@とする).
解答
解説
球にはたらく重力を加速度の方向と,それに垂直な方向とに分解すると図3のようになる.
加速度の方向に働く力は
Mgsin30° [ N ]
と
F [ N ]
である.
よって運動方程式は
MA=Mgsin30°−F
になる.
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(3)
回転運動の方程式を書け(これをAとする).
解答
解説
回転運動の方程式は,
Iα=T
で与えられ,
T
はトルク
[
N⋅m ]
である.トルクとは,物体に回転運動を生じさせる回転軸の周りの力のモーメントのことで,今の場合
T=RF
である.
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(4)
A=Rα⋯
B
を用いて,設問
(
2
)
,
(
3
)
の解答の2式@Aから
F
と
α
を消去して球の重心の加速度
A
を求めよ.
解答
A=
g
2(
1+
I
M
R
2
)
[
m/s
2
]
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解説
A,Bから
α
を消去して
F=
IA
R
2
これを@に代入して
MA=
Mg
2
−
IA
R
2
, MA+
IA
R
2
=
Mg
2
, (
M+
I
R
2
)A=
Mg
2
A=
Mg
2(
M+
I
R
2
)
=
g
2(
1+
I
M
R
2
)
[
m/s
2
]
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(5)
球の慣性モーメント
I=2M
R
2
/5
・・・C
を用いて,球の重心の加速度
A
を数値と
g
だけを用いて表せ.
解答
解説
A=
g
2(
1+
I
M
R
2
)
=
g
2(
1+
2M
R
2
5M
R
2
)
=
g
2(
1+
2
5
)
=
g
2⋅
7
5
=
5
14
g [
m/s
2
]
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(6)
球が回転しないで斜面を滑った場合と,球が回転して斜面を転がった場合では,どちらがはやく落下するか.適切な選択肢を選べ.
球が回転しないで斜面を滑った場合
球が回転して斜面を転がった場合
どちらも同じ
球が回転しない場合を考える.このとき
α=0
だから,Aより
I×0=RF
となり,
F=0
である.これを@に代入すると
MA=Mgsin30°−F=
1
2
Mg
となり,
A=
1
2
g [
m/
s
2
]
である.
これは
A=
5
14
g [
m/s
2
]
より大きいので答えは
「球が回転しないで斜面を滑った場合」
である.
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学生スタッフ作成
2021年6月18日