階数低減法

階数低減法 (reduction of order)

n 階の微分演算子

L1 (n) = i=0 n ai (x) Di = an (x) Dn + an1 (x) Dn1 ++ a1 (x) D + a0 (x)     - - - (1)

を用いて表される n 階非同次線形微分方程式 L1 (n) [y] = f(x)  を考える.ここで, D= d/ dx である(微分演算子).同次方程式 L1 (n) [y]=0  の解(独立な解は n 個)が一つでも分かっていれば,この非同次方程式の階数を一つ下げて, n1 階の線形微分方程式の形に直すことができる.その方法を 階数低減法(reduction of order) という.

2階線形微分方程式の場合の例

まず,同次方程式 L1 (n) [y]=0  のゼロでない解 y1 (x) が分かっているとする.つまり,

L1 (n) [y1] = i=0 n ai (x) y1 (i) =0     - - - (2)

である.この解と,定数ではない x の未知関数 u(x) とを用いて,非同次方程式の一般解を

y(x) = u(x) y1 (x)     - - - (3)

とおく.式 (3) に式 (1) を作用させて,

y(i) = diy dxi = j=0 i Ci j u(j) y1 (ij)

を用いると,

L1 (n) [y] = i=0 n ai (x) y(i)

= i=0 n ai (x) j=0 i iCj u(j) y1 (ij)

= i=0 n ai (x) { u y1 (i) + j=1 i iCj u(j) y1 (ij) }

=u i=0 n ai (x) y1 (i) + i=1 n ai (x) j=1 i iCj u(j) y1 (ij)     - - - (4)

となる.式 (4) の第1項目は式 (2) より消え,第2項目の和の順序を入れ替えて j=0 からの和に変更すると,

L1 (n) [y] = j=1n [ i=jn ai (x) iCj y1 (ij) ] u(j) = j=0 n1 [ i=j+1n ai (x) iCj+1 y1 ( ij1 ) ] u (j+1)     - - - (5)

が得られる.ここで, w(x) = du / dx を導入すると, w(j) = u (j+1)  であり,式 (5) の [ ]の中を

bj = i=j+1 n ai (x) iCj+1 y1 ( ij1 )

とおくと,

L1 (n) [y] = j=0 n1 bj (x) w(j) = L2 (n1) [w]   ,   L2 (n) = i=0 n bi (x) Di

と書ける.したがって, n 階の線形微分方程式 L1 (n) [y] = f(x)  が n1 階の線形微分方程式 L2 ( n1 ) [w] = f(x) の形に直せるのである.この n1 階の線形微分方程式を(解くことができれば)解いて w を求め, u= wdx から u を求めてやれば,式 (3) より一般解 y が求まる.


◎ 2階線形微分方程式の例

階数低減法の例として最もよく知られているのは定数係数の2階同次線形微分方程式の特性方程式の解が実重根の場合(*)であるが,まずはより一般的な場合を考える.

2階非同次線形微分方程式

y + a1 (x) y + a0 (x)y = f(x)     - - - (6)

について,同次方程式

y + a1 (x) y + a0 (x)y = 0     - - - (7)

の一つの解が y1 と分かっているとする. x の未知関数 u(x) を用いて, y=u y1 とおくと,

y = u y1 +u y1   ,   y = u y1 + 2 u y1 + u y1

である.これらを式 (6) に代入すると,

u y1 + 2 u y1 + u y1 + a1 ( u y1 +u y1 ) + a0 uy1 = f
⇒   u y1 + u ( 2 y1 + a1 y1 ) + u ( y1 + a1 y1 + a0 y1 ) = f

が得られる. y1 は式 (7) の解なので,上式左辺の第3項目の( )の中の式はゼロである.したがって, w=u  とおいて,両辺を y1 で割って整理すると,

y1 w + ( 2y1 + a1 y1 )w = f   ⇒   w + ( 2y1 y1 + a1 ) w = f y1     - - - (8)

となる.これが階数低減法によって得られた1階微分方程式である.この1階微分方程式の積分因子は

μ= exp [ ( 2y1 y1 + a1 )dx ] =exp[ 2 y1 y1 dx + a1dx ] =exp[ 2log |y1| + a1dx ] = y12 exp[ a1 dx ]

であり,この積分因子を用いて,一般解として

w= 1μ [ μ f y1 dx +C ] = y12 e a1 dx [ y1 f e a1 dx dx +C ]    ( C :任意定数)

が求まる.あとは, u= wdx から u を求めてやれば,解 y=u y1 が求まる.


◎ 定数係数の2階同次線形微分方程式の特性方程式の解が実重根の場合

定数係数の2階同次線形微分方程式

y +ay +by =0    ( a , b :実定数)     - - - (9)

において, a2 4b =0  のときの解を求めることを考える.この場合,特性方程式 λ2 +aλ +b =0 の解は

λ= a± a24b 2 = a2   (実重根)

であるので,式 (9) の一つの解は

y1 = e a2x     - - - (10)

である. x の未知関数 u(x) を用いて, y=u y1 =u e a2x とおいて,式 (9) に代入して整理すると,

u e a2x au e a2x +a24 u e a2x +a ( u e a2x a2 u e a2x ) +bu e a2x =0

⇒   { u 14 ( a24b ) u} e a2x =0   ⇒   u e a2x =0

となり, w=u  とおいて(今の場合,特におく必要はないが), e a2x 0 であることを考えると,1階微分方程式 w =0 が得られる.この解は w= c1 であり,これより u= wdx = c1x +c2 が求まる( c1 , c2 :任意定数).したがって,式 (9) の一般解は

y=u e a2x = ( c1x +c2 ) e a2x

となる.このことから,式 (9) のもう一つの独立な解は y2 =x e a2x であることが分かる.


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