アフィン変換 (Affine transformation)
1次変換(線形変換)に平行移動を組み合わせた変換を アフィン変換 (Affine transformation) という.
変換前のベクトルを
,変換後のベクトルを
とすると,アフィン変換は
······
と表すことができ,右辺第1項目
が1次変換に,第2項目
が平行移動に対応する.ここで,正方行列
は1次変換の表現行列であり,ベクトル
は平行移動する方向と距離を表す.式(1)は,ベクトル
を1次変換した後に
だけ平行移動させることを表す.
◆ 同次座標による表現
変換するベクトル
に,常に
である仮想的な座標を1つ付け加えることで,アフィン変換を1つの行列の積で統一的に表現できる.具体的には,式(1)に恒等式
を付け加え
······
と書いて,まとめて行列表示すると
······
と表せる.この仮想的な座標を1つ付け加えた座標
のことを 同次座標 (homogeneous coordinates) という.同次座標を導入することで1次変換と平行移動が1つの行列
の積として表現できるため,計算が簡潔になる.例えば,アフィン変換を
繰り返し
回行う場合,それらの表現行列を
,
,
,
とすると,1次変換の場合と同様の表記
······
で変換後のベクトル
が求まる.
■ 座標平面(2次元ベクトル空間)の場合
点
を
に移すアフィン変換は
······
······
と表される.同次座標を用いると
······
と表される.
■ 座標空間(3次元ベクトル空間)の場合
点
を点
に移すアフィン変換は
······
······
と表される.同次座標を用いると
······
と表される.
幾何学的には,1次変換は原点を固定したまま図形を変形させる変換で,
- 拡大・縮小:
原点を基準として図形のサイズを変える
- 回転:
図形を原点の周りで回転させる
- せん断(スキュー):
図形の四角形領域を平行四辺形に変形する
- 鏡映:
原点を通る軸に関して図形を反転させる
などがあり,アフィン変換はこれらに
平行移動(図形の形や向きを変えずに位置をずらす)を加えた,より広範囲な変換となる.そのため,アフィン変換は,コンピュータグラフィックス,画像処理,地理情報システムなどの様々な分野で広く利用されている.
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最終更新日:2025年10月21日