信頼区間 — 区間推定の被覆シミュレーター

信頼区間 — 区間推定の被覆シミュレーター

区間推定を「くり返し」体験し,信頼区間が本当に意味することを目で確かめるためのシミュレータである.

●目次

  1. このアプリは何をするもの?
  2. 画面の構成
  3. 使い方(操作手順)
  4. 学ぶ内容 ― 信頼区間の作り方
  5. 「区間外の割合」が意味すること
  6. グラフの読み方
  7. おすすめの観察テーマ
  8. 記号・数式まとめ表

1 このアプリは何をするもの?

母集団が正規分布 N μ , σ 2 に従うとき,そこから大きさ n の標本をくり返し抽出し, 標本ごとに 母平均 μ の信頼区間母分散 σ 2 の信頼区間 を作成するシミュレータである.

信頼区間は標本を取り直すたびに位置も幅も変わり,真の値(母数)を含んだり外したりする. 本アプリは試行を何百回・何千回とくり返すことで, 「区間が真の値を外す割合」が有意水準 α (=1−信頼係数)に一致することを, 集計値とグラフの両方で確かめられます.

信頼区間の理解を深めるためのExcel教材」をWeb ページで再現している.

2 画面の構成

設定   母平均 μ ,母標準偏差 σ ,標本数 n 信頼係数(%),1回の繰り返し回数を入力する枠がある.枠の下に. 母分散 σ 2 ,信頼区間の下限値に対応する累積確率  p l ,上限値に対応する累積確率  p u が自動で表示される.

集計   「平均の信頼区間外の割合」「分散の信頼区間外の割合」を理論値 α と並べて表示.加えて標本平均の平均・不偏分散の平均も表示される(折りたたみ可能).

試行   直近に生成した1標本の x ¯ s 2 t n 1 α 2 t n 1 α 2 χ n 1 2 1 α 2 χ n 1 2 α 2 ,母平均の区間 θ l , θ u ,母分散の区間 ϕ l , ϕ u ,そして真の値が「区間内区間外」のどちらかを「」で表示される. ここを参照

グラフ   直近100試行分の4つのグラフ.①母平均の信頼区間,②母分散の信頼区間,③標本平均の推定,④不偏分散の推定.真の値を外した区間は赤で強調さる.

3 使い方(操作手順)

  1. 母集団のパラメータを決める
    母平均 μ (例 10),母標準偏差 σ (例 4),標本数 n (例 10)を入力する.母分散 σ 2 は自動計算される.
  2. 信頼係数を決める
    信頼係数(%)(例 95)を入力します. p l = 1 0.95 / 2 = 0.025 p u = 1 1 0.95 / 2 = 0.975 が自動表示され,信頼係数95%信頼区間が作られる.90 や 99 に変えると区間の幅が変化する.
  3. 1回の繰り返し回数を決める
    1回の サンプリング実行で何組の標本=いくつの信頼区間を作るかを指定する(既定 100).
  4. サンプリングを実行する
    サンプリング実行 を押すと標本抽出と区間計算が行われ,集計値・試行表示・グラフが更新される. +1+100+1000 は,その回数だけ即座に追加蓄積するショートカットである.
  5. 試行を積み重ねる
    ボタンを押すたびに結果が累積される(「累積試行回数」に表示).回数が増えるほど「区間外の割合」が α (95%なら 0.05)に近づく.
  6. 集計値を読む
    「平均の信頼区間外の割合」「分散の信頼区間外の割合」が α に一致していくかを確認する.かっこ内は(外れた回数/試行回数)である.
  7. やり直す
    ✕ 全消去(リセット) で累積データを初期化する. μ σ n ,信頼係数を変更した場合は自動的にリセットされる.
コツ: まず +1を何度か押して「1回ごとに区間の位置・幅が変わり,たまに真の値を外す」様子を体感し, 次に +1000を積み増して「外す割合が 0.05 に収束する」ことを確かめると,信頼区間の意味がつかみやすくなる.

4 学ぶ内容 ― 信頼区間の作り方

n 個の標本 x 1 , , x n N μ , σ 2 から取り出し,母平均 μ と母分散 σ 2 の信頼係数 γ = 1 α の区間を作ります. x ¯ は標本平均, s 2 は不偏分散 1 n 1 i = 1 n x i x ¯ である.

(1) 母平均 μ の区間推定 ― t 分布

母分散が未知なので不偏分散 s 2 を使う. 統計量 x ¯ μ s 2 n が自由度 n 1 t 分布に従うことを利用し,下限 θ l ,上限 θ u を求める.

θ l , θ u = x ¯ t n 1 α 2 s 2 n

(2) 母分散 σ 2 の区間推定 ― χ 2 分布

i = 1 n x i x ¯ 2 σ 2 が自由度 n 1 のカイ二乗分布に従うことを利用する. 平方和 i = 1 n x i x ¯ 2 = n 1 s 2 χ 2 の分位点で割って下限 ϕ l ,上限 ϕ u を求める.

ϕ l = n 1 s 2 χ n 1 2 α 2 , ϕ u = n 1 s 2 χ n 1 2 1 α 2

大きい分位点 χ n 1 2 α 2 で割ると小さい下限 ϕ l に,小さい分位点 χ n 1 2 1 α 2 で割ると大きい上限 ϕ u になる点に注意しましょう (割る値が大きいほど商は小さくなる).

これらの土台となる「標本平均が N μ , σ 2 n ) に従う」「( x ¯ μ s 2 n t 分布に従う」「 i = 1 n x i x ¯ 2 σ 2 χ n 2 分布に従う」 といった標本分布そのものは,姉妹教材「区間推定(基礎)」で確認できる.

5「区間外の割合」が意味すること

このアプリの核心は,信頼区間の正しい解釈を体験で理解することです.

信頼係数95%の信頼区間とは,「真の値がこの区間に入る確率が95%」という意味ではない. 真の値 μ は動かない定数で,動くのは標本ごとに変わる区間のほうある.正しくは次の意味である.

同じ手続きで区間作りを何度もくり返すと,そのうち約 1 α の区間が真の値を含む

裏返せば, α の区間は真の値を外す.信頼係数95%なら α = 0.05 ,すなわち約5%の区間が母数を外す. アプリの「平均,分散の信頼区間外の割合」が,試行を重ねるほど α に近づくことがこの事実の実証である.

よくある誤解: 「95%区間だから,いま得た1つの区間に真の値が95%の確率で入っている」は誤りである. 個々の区間は真の値を「含む」か「含まない」かのどちらかで,確率95%は手続きをくり返したときの成功率を指す.

6 グラフの読み方

4つのグラフはいずれも横軸が「試行(直近100件)」である.凡例の色は次の意味である.

  • 青い縦線真の値を含む信頼区間
  • 赤い縦線真の値を外した信頼区間
  • 赤い破線母数(真の値) μ または σ 2
  • 青い点・線各試行の推定量(標本平均・不偏分散)

① 母平均の信頼区間 / ② 母分散の信頼区間

試行ごとの区間 θ l , θ u ϕ l , ϕ u を縦線で描き,赤い破線(真の値)をまたいでいれば青,外れていれば赤で示す. 赤い縦線がおよそ100本に5本の割合で現れることを目で確認できる.

③ 標本平均の推定 / ④ 不偏分散の推定

各試行の x ¯ s 2 の推移を折れ線で表示す.値は赤い破線( μ σ 2 )のまわりを上下にばらつくが, 多数の試行での平均は真の値に一致する(集計カードの「標本平均の平均」「不偏分散の平均」で確認).

グラフは直近100試行分を表示しますが,「区間外の割合」は最初からの全試行で集計している.

7 おすすめの観察テーマ

  • 収束を見る: +100+1000 と積み増し,「区間外の割合」が 0.05 に近づく様子を観察する.
  • 信頼係数を変える: 95% → 90% → 99% と変えて,区間の幅と「区間外の割合(≈0.10, 0.01)」がどう変わるか比べる.信頼係数を上げると区間は広く,外す割合は小さくなる.
  • 標本数 n を変える: n=5 n=50 で母平均の区間の幅を比較. n が大きいほど S 2 n が小さくなり区間が狭く(精度が高く)なる.
  • 平均と分散を比べる: 母分散の区間(②)赤い点線に対して非対称で,母平均の区間(①)より幅が広く不安定なことを確認する.
  • 1回ずつ見る: +1 を連打し,赤い区間(外れ)がときどき現れることを体感する.どの区間が外れるかは事前には分からない.

8 記号・数式まとめ表

記号 意味 計算式 / 定義
x ¯ 標本平均 1 n i=1 n x i
s 2 不偏分散 1 n1 i=1 n x i x ¯ 2
t n1 α 2 , t n1 α 2 t 分布の分位点 下側累積確率 p l , 上側累積確率 p u に対応(自由度 n1
θ l , θ u 母平均の信頼区間 x ¯ t n1 α 2 s 2 n , x ¯ + t n1 α 2 s 2 n
χ n1 2 1 α 2 , χ n1 2 α 2 χ 2 分布の分位点 下側累積確率 p l , 上側累積確率 p u に対応(自由度 n1
ϕ l , ϕ u 母分散の信頼区間 n1 s 2 χ n1 2 α 2 , n1 s 2 χ n1 2 1 α 2
α 有意水準 1 − 信頼係数(外す割合の理論値)

 

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最終更新日:2026年9月13日