※ 三角マークのついた項目をクリックすると説明文が現れる.
図1のように,質量 ,半径 の一様な剛体とみなせるボールが,初速ゼロで水平面とのなす角 の粗い斜面上の点 から滑らずに転がり落ちる.斜面に沿って下向きに 軸をとり,重力加速度の大きさを とする.また, 軸方向のボールの重心 の加速度を ,ボールの重心を通る回転軸まわりの慣性モーメントを ,その回転運動における角加速度を とする.
斜面に沿った方向において,剛体には重力の斜面下向き成分( )と斜面上向きに大きさ 静止摩擦力が作用するので,剛体の重心の運動方程式(の 方向成分)は
--- (1)
となる.また,剛体には静止摩擦力による重心まわりのトルク(力のモーメント) が生じるので,回転運動方程式は
--- (2)
となる.剛体が斜面上を滑らずに転がり落ちる場合
--- (3)
が成り立ち,式(1),(2),(3)を連立して, と を消去すると,加速度
--- (4)
が得られ,時刻に依らず一定の加速度であることが分かる.
【参照】斜面を転がり落ちる剛体球
〔m〕
※ 各ボールの質量と半径を入力して「慣性モーメントを計算」ボタンを押すと,剛体球とみなした場合の慣性モーメントと剛体球殻とみなした場合の慣性モーメントの値を表示する.数値は科学的表記されており,「#.###e±n」は「#.###×10±n」を表す.
開始位置の高さ を変えながら,各種ボールが開始位置から下端まで斜面を滑らずに転がり落ちる時間をストップウォッチで測定する.
測定時間を として,各種ボールの加速度 を一定(等加速度直線運動)とすると, と には
⇒
の関係がある.測定結果をもとに,ボールの加速度 を計算し,有効数字を考慮して集計表に記入する.(下表では,5回の測定時間 〜 を入力して集計ボタンを押せば,測定時間の平均値 ,加速度 を自動的に計算する.ただし,ボールが転がり落ちる距離 を事前に【実験の準備】の記入欄に入力しておく必要がある.)
集計したゴルフボール・卓球ボール・テニスボールのデータについて,グラフ用紙(標準方眼用紙)を用いて,横軸に高さ ,縦軸に加速度 をとって散布図を描く(参考:グラフの作成の仕方).3種類のボールについての散布図は1枚のグラフ用紙に重ねて描けばよい.上述の【原理・理論】(斜面を転がり落ちる剛体球)によると,点 から斜面下端までの距離を ,斜面下端を基準とした点 の高さを とすると より,【原理・理論】における式(4)は
--- (5)
と表され,重心の加速度 と高さ には線形関係がある.原点を通って,描いた散布図のデータを最もよく表す近似直線(回帰直線)を引き,その近似直線の傾きと式(5)との関係から,各ボールの慣性モーメント を見積もる:
近似直線の傾きの値 ⇒
求めた慣性モーメントの値を,【実験の準備】において各種ボールを剛体球または剛体球殻とみなして計算した慣性モーメントの値と比較するとよい.散布図や近似直線の描画にはExcelのようにグラフを作成できるソフトウェアを用いるのもよいであろう(Excelには回帰直線を自動で引いてくれる機能がある).集計・解析が終われば,実験レポートを作成する(参考:実験レポートの書き方).
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