グリーンの定理(補題1)

xy 平面上において D を有界な領域とする. D の境界は有限個の区分的に滑らかな閉曲線からなるものとする.この境界を C とし,正の向きを定める.閉領域 D が縦線形領域 D: axb ψ( x )yϕ( x ) と表せ,2変数関数 f( x,y ) が閉領域 D で1回微分可能であるならば次式が成り立つ.

D f y ( x,y )dxdy = C f( x,y )dx  ・・・・・・(1)

■導出

領域を図示すると図のようになる. D f y ( x,y )dxdy 累次積分(重積分)と考えて式を変形すると

D f y ( x,y )dxdy = a b ( ψ( x ) ϕ( x ) f y ( x,y )dy )dx

x を固定して f y ( x,y ) y で積分する

= a b ( [ f( x,y ) ] ψ( x ) ϕ( x ) )dx

x は固定しているので y のみが変化する

= a b { f( x,ϕ( x ) )f( x,ψ( x ) ) }dx

定積分の基本式を使用して2つの積分に分ける

= a b f( x,ϕ( x ) )dx a b f( x,ψ( x ) )dx  ・・・・・・(2)

次に,線積分と考えて式を変形する.

境界 C において点 ABCD EFGHA と一周する経路を正の向きとする.

A から点 D に至る経路を C 1
D から点 E に至る経路を C 2
E から 点 H に至る経路を C 3
H から点 A に至る経路を C 4

とすると,境界 C に沿った線積分は次のように表せる.

C f( x,y )dx = C 1 f( x,y )dx + C 2 f( x,y )dx + C 3 f( x,y )dx + C 4 f( x,y )dx  ・・・・・・(3)

右辺の各項について考える.

[1] C 1 f( x,y )dx

x=t とおいて, C 1 を変数 t を用いて表すと

{ ( t,ψ( t ) );t[ a,b ] }  ・・・・・・(4)

となる.

この曲線上において t a から b に変化させると,点 t,ψ t は経路 C 1 に沿って点 A から点 D に移動することから,線積分 C 1 f( x,y )dx を積分変数が t 定積分置換すると

C 1 f( x,y )dx = a b f( t,ψ( t ) ) dx dt dt  ・・・・・・(5)

ここで, x=t であるから

dx dt =1  ・・・・・・(6)

となる.(6)を(5)に代入すると

C 1 f( x,y )dx = a b f( t,ψ( t ) )dt  ・・・・・・(7)

[2] C 2 f( x,y )dx

経路 C 2 において, x は常に x=b である.

よって, y=t とおいて, C 2 を変数 t および定数 b を用いて表すと

{ ( b,t );t[ ψ( b ),ϕ( b ) ] }  ・・・・・・(8)

[1]と同様に積分変数が t 定積分置換すると

C 1 f( x,y )dx = ψ( x ) ϕ( x ) f( b,t ) dx dt dt  ・・・・・・(9)

となる. x=b と一定であるから,

dx dt =0  ・・・・・・(10)

となる.よって,(9)は

C 2 f( x,y )dx = ψ( x ) ϕ( x ) f( b,t ) dx dt dt =0  ・・・・・・(11)

となる.

[3] C 3 f( x,y )dx

[1]と同様に x=t とおいて C 3 を変数 t を用いて表すと

{ ( t,ϕ( t ) );t[ a,b ] }  ・・・・・・(12)

となる.

この曲線上において t b から a に変化させると,経路 C 3 に沿って点 t,ϕ t は点 E から点 H に移動することから, 線積分 C 3 f( x,y )dx を積分変数が t 定積分置換すると

C 3 f( x,y )dx = b a f( t,ϕ( t ) ) dx dt dt = a b f( t,ϕ( t ) ) dx dt dt  ・・・・・・(13)

となる. x=t であるから

dx dt =1  ・・・・・・(14)

となる.(14)を(13)に代入すると

C 3 f( x,y )dx = a b f( t,ϕ( t ) )dt  ・・・・・・(15)

となる.

[4] C 4 f( x,y )dx

経路 C 4 において, x は常に x=a である.

よって,[2]と同様に

dx dt =0  ・・・・・・(16)

となる.よって,(14)は

C 4 f( x,y )dx =0  ・・・・・・(17)

となる.

[1],[2],[3],[4]より

C f( x,y )dx

= C 1 f( x,y )dx + C 2 f( x,y )dx + C 3 f( x,y )dx + C 4 f( x,y )dx

= a b f( t,ψ( t ) )dt +0 a b f( t,ϕ( t ) )dt +0

= a b f( t,ψ( t ) )dt a b f( t,ϕ( t ) )dt

=[ a b f( t,ϕ( t ) )dt a b f( t,ψ( t ) )dt ]  ・・・・・・(18)

累次積分と線積分による解をまとめると

累次積分による解((2)を再掲載)

D f y ( x,y )dxdy = a b f( x,ϕ( x ) )dx a b f( x,ψ( x ) )dx  ・・・・・・(19)

線積分による解((16)を再掲載)

C f( x,y )dx =[ a b f( t,ϕ( t ) )dt a b f( t,ψ( t ) )dt ]  ・・・・・・(20)

(20)に(19)を代入すると

C f( x,y )dx = D f y ( x,y )dxdy

D f y ( x,y )dxdy = C f( x,y )dx  ・・・・・・(21)

が得られる.

 

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最終更新日:2024年10月7日