減衰振動 : 微分方程式の解法 (solution of differential equation)
減衰振動の従う微分方程式
d2x
dt2
+2γ
dx
dt
+
ω02x
=0
(
γ
,
ω0
:正定数)
- - - (1)
の一般解を求める: 解法1 解法2 (初期値問題は ⇒)
解法1
式(1)は定数係数の2階同次線形微分方程式であるので,解を
x=
e
λt
とおくと,
dx
/
dt
=λ
eλt
,
d2
x
/
d
t2
=
λ2
eλt
より
d2x
dt2
+2γ
dx
dt
+
ω02x
=
λ2
eλt
+
2γλ
eλt
+
ω02
eλt
=
(
λ2
+
2γλ
+
ω02
)
eλt
=0
となり,
eλt
≠0
から,特性方程式
λ2
+
2γλ
+
ω02
=0
- - - (2)
を得る.この特性方程式の解は
λ=
−γ±
γ2
−
ω02
- - - (3)
となり,
λ1=
−γ+
γ2
−
ω02
,
λ2=
−γ−
γ2
−
ω02
とおくと,式(1)の一般解は2つの独立な解
eλ1t
,
eλ2t
の線形結合
x=
c1
eλ1t
+
c2
eλ2t
(
c1
,
c1
:任意定数) - - - (4)
として求まるが,より正確には式(3)の根号内の
γ2
−
ω02
の符号によって場合分けする必要がある:
(i)
γ2
−
ω02
<0
の場合 (
γ<
ω0
: 不足減衰)
この場合,式(3)の根号内の
γ2
−
ω02
は負であるので,
γ2
−
ω02
=i
ω02
−
γ2
=iω
- - - (5)
とおくと,特性方程式の2つの解は共役複素根として,
λ1=
−γ+
iω
,
λ2=
−γ−
iω
と表される.
したがって,オイラーの公式
e±iθ
=
cosθ±isinθ
を用いると,2つの独立な解は
eλ1t
=
e
(
−γ+iω
)
t
=
e−γt
eiωt
=
e−γt
(
cosωt
+
isinωt
)
eλ2t
=
e
(
−γ−iω
)
t
=
e−γt
e−iωt
=
e−γt
(
cosωt
−
isinωt
)
となる.よって,一般解は
x=
c1
eλ1t
+
c2
eλ2t
=
e−γt
{
(
c1
+
c2
)
cosωt
+i
(
c1
−
c2
)
sinωt
}
と書ける.物理量
x
が実数であることを考えると,
c1
=
(
A1
+i
A2
)
/2
,
c2
=
(
A1
−i
A2
)
/2
とおいて
x=
e−γt
(
A1
cosωt
+
A2
sinωt
)
(
A1
,
A2
: 任意定数(実数))
- - - (6)
が求まる(2つの独立な解として,
e−γt
cosωt
,
e−γt
sinωt
を選び,それらの線形結合をとることに対応).
また,
A=
A12
+
A22
,
cosα=
A1
/A
,
sinα=−
A2
/A
とおいて,加法定理を用いると,一般解は
x=A
e−γt
cos(ωt+α)
(
A
,
α
: 任意定数)
- - - (7)
と書ける.
(ii)
γ2
−
ω02
>0
の場合 (
γ>
ω0
: 過減衰)
この場合,特性方程式は2つの異なる実数根を持ち,
η=
γ2
−
ω02
とおくと,
λ1=
−γ+
η
,
λ2=
−γ−
η
より
x=
c1
eλ1t
+
c2
eλ2t
=
c1
e
(−γ+η)t
+
c2
e
(−γ−η)t
=
e−γt
(
c1
eηt
+
c2
e−ηt
)
- - - (8)
となる(
c1
,
c2
:任意定数).
η<γ
なので,
λ1
,
λ2
<0
であり,2つの独立な解
e
λ1t
,
e
λ2t
はともに減少関数である.
(iii)
γ2
−
ω02
=0
の場合 (
γ=
ω0
: 臨界減衰)
この場合,特性方程式はただ一つの実数根
λ=−γ
(実重根)を持ち,2つの独立な解の一つは
x1=
e−γt
である.
もう一つの解は,階数低減法によって求める.まず,
t
の関数
u(t)
を用いて,もう一つの解を
x2=
e−γt
u
とおくと,
dx2
dt
=
−γ
e−γt
u
+
e−γt
du
dt
,
d2x2
dt2
=
γ2
e−γt
u
−2γ
e−γt
du
dt
+
e−γt
d2u
dt2
であるので,これらを式(1)に代入すると
(
γ2
e−γt
u
−2γ
e−γt
du
dt
+
e−γt
d2u
dt2
)
+2γ
(
−γ
e−γt
u
+
e−γt
du
dt
)
+
ω02
e−γt
u
=
e−γt
d2u
dt2
−
(
γ2
−
ω02
)
e−γt
u
=0
今,
γ2
−
ω02
=0
なので,上式は結局
d2u
dt2
=0
となり,2回積分すると
u(t)
=
c1
+
c2t
(
c1
,
c2
:任意定数)
が得られるが,もう一つの独立な解
x2
を求めるには単純に
u(t)
=t
とすればよいので,
x2=
te−γt
が求まる.したがって,一般解は
x=
c1x1
+
c2x2
=
c1
e−γt
+
c2t
e−γt
=
(
c1
+
c2t
)
e−γt
- - - (9)
となる(
c1
,
c2
:任意定数).(実は,
u(t)
=
c1
+
c2t
とすれば,
x=
u
e−γt
=
(
c1
+
c2t
)
e−γt
が一般解を表す.)
解法2 ページトップ
式(1)の解を
x=
e
−γt
u
の形におく(
u
は
t
の関数
)と,
dx
dt
=
−γ
e−γt
u
+
e−γt
du
dt
,
d2x
dt2
=
γ2
e−γt
u
−2γ
e−γt
du
dt
+
e−γt
d2u
dt2
であるので,これらを式(1)に代入すると
(
γ2
e−γt
u
−2γ
e−γt
du
dt
+
e−γt
d2u
dt2
)
+2γ
(
−γ
e−γt
u
+
e−γt
du
dt
)
+
ω02
e−γt
u
=
e−γt
d2u
dt2
−
(
γ2
−
ω02
)
e−γt
u
=
e−γt
(
d2u
dt2
−
(
γ2
−
ω02
)
u
)
=0
となる.ここで,
e−γt
≠0
であるので,
d2u
dt2
−
(
γ2
−
ω02
)
u
=0
- - - (10)
が
u
について成り立つ.この式(10)について
γ2
−
ω02
の符号により3つの場合に分ける:
(i)
γ2
−
ω02
<0
の場合 (
γ<
ω0
: 不足減衰)
ω=
ω02
−
γ2
- - - (11)
とおくと,式(10)は
d2u
dt2
+
ω2
u
=0
- - - (12)
となり,単振動の従う微分方程式と一致する.その特性方程式
λ2
+
ω2
=
(λ−iω)
(λ+iω)
=0
の解は
λ=±iω
であるので,式(12)の一般解は
u=
A1
cosωt
+
A2
sinωt
(
A1
,
A2
: 任意定数)
- - - (13)
あるいは,
u=
Acos
(
ωt+α
)
(
A , α
: 任意定数)
- - - (14)
と求まる.したがって,
x=
e
−γt
u
より,式(1)の一般解として
x=
e−γt
(
A1
cosωt
+
A2
sinωt
)
(
A1
,
A2
: 任意定数)
- - - (15)
あるいは,
x=A
e−γt
cos(ωt+α)
(
A
,
α
: 任意定数)
- - - (16)
が得られる.
(ii)
γ2
−
ω02
>0
の場合 (
γ>
ω0
: 過減衰)
η=
γ2
−
ω02
- - - (17)
とおくと,式(10)は
d2u
dt2
−
η2
u
=0
- - - (18)
となり,その特性方程式
λ2
−
η2
=
(λ−η)
(λ+η)
=0
の解は
λ=±η
であるので,式(12)の一般解は
u=
c1
eηt
+
c2
e−ηt
(
c1
,
c2
:任意定数)
- - - (19)
と求まる.したがって,式(1)の一般解は
x=
e
−γt
u
より
x=
e−γt
(
c1
eηt
+
c2
e−ηt
)
(
c1
,
c2
:任意定数) - - - (20)
となる.
(iii)
γ2
−
ω02
=0
の場合 (
γ=
ω0
: 臨界減衰)
この場合,式(10)左辺の第2項目がゼロになるので,
d2u
dt2
=0
- - - (21)
である.上式を2回積分すると
u=
c1
+
c2t
(
c1
,
c2
:任意定数)が得られるので,式(1)の一般解は
x=
e
−γt
u
より
x=
(
c1
+
c2t
)
e−γt
(
c1
,
c2
:任意定数) - - - (22)
と求まる.
初期値問題 ページトップ
初期条件
x(0)=
x0
,
v(0)=
v0
を満たす特殊解を求める(
v(t)=
dx/
dt
).
(i)
γ2
−
ω02
<0
の場合 (
γ<
ω0
: 不足減衰)
一般解を
x=
e−γt
(
A1
cosωt
+
A2
sinωt
)
とした場合
v=
dx
dt
=−
e−γt
{
(
γA1
−
ωA2
)
cosωt
+
(
ωA1
+
γA2
)
sinωt
}
初期条件より
x(0)
=
e0
(
A1cos0
+
A2sin0
)
=A1
=x0
v(0)
=−
e0
{
(
γA1
−
ωA2
)
cos0
+
(
ωA1
+
γA2
)
sin0
}
=
−γA1
+
ωA2
=v0
⇒
A2
=
x0γ
+
v0
ω
なので,初期条件を満たす解は次式となる.
x=
e−γt
(
x0
cosωt
+
x0γ
+
v0
ω
sinωt
)
- - - (23)
一般解を
x=A
e−γt
cos(ωt+α)
とした場合
v=
dx
dt
=−A
e−γt
{
γcos
(ωt+α)
+
ωsin
(ωt+α)
}
初期条件より
x(0)
=A
e0
cos(0+α)
=Acosα
=x0
v(0)
=−
A
e0
{
γcos
(0+α)
+
ωsin
(0+α)
}
=
−γAcosα
−ωAsinα
=v0
⇒
Asinα
=
−
x0γ
+
v0
ω
なので,任意定数
A
,
α
は
A2
=
(Acosα)
2
+
(Asinα)
2
=
x02
+
(
−
x0γ
+
v0
ω
)2
=
x02
+
(
x0γ
+
v0
)2
ω2
- - - (24)
tanα
=
sinα
cosα
=
−
x0γ
+
v0
ω
x0
=
−
x0γ
+
v0
x0ω
(
x0
≠0
)
- - - (25)
を満たすように決定する(
x0
=0
のときは,
cosα=0
を満たす
α
を考えればよい
).
この場合,
A
については正負の,
α
については
nπ
(
n
:整数)の任意性が残っているが,
A>0
と制限すると,
A=
x02
+
(
x0γ
+
v0
)2
ω2
- - - (26)
であり,
α
については,次の2式
cosα=
x0
A
=
x0ω
(
x0ω
)
2
+
(
x0γ
+
v0
)2
,
sinα=−
x0γ
+v0
Aω
=−
x0γ
+v0
(
x0ω
)
2
+
(
x0γ
+
v0
)2
- - - (27)
を同時に満たすように
−π<α≤π
の範囲内で考えれば,一意的に決まる.
(ii)
γ2
−
ω02
>0
の場合 (
γ>
ω0
: 過減衰)
一般解 :
x=
e−γt
(
c1
eηt
+
c2
e−ηt
)
v=
dx
dt
=−
e−γt
{
(γ−η)
c1
eηt
+
(γ+η)
c2
e−ηt
}
初期条件より
x(0)
=
e0
(
c1e0
+
c2e0
)
=c1
+c2
=x0
v(0)
=−
e0
{
(γ−η)
c1
e0
+
(γ+η)
c2
e0
}
=−
(γ−η)
c1
−
(γ+η)
c2
=v0
上の2式を連立させて
c1
,
c2
を求めると
c1
=
(γ+η)
x0
+
v0
2η
,
c2
=−
(γ−η)
x0
+
v0
2η
- - - (28)
が得られる.したがって,初期条件を満たす解は次式となる.
x=
(γ+η)
x0
+
v0
2η
e−(
γ−η
)t
−
(γ−η)
x0
+
v0
2η
e−(
γ+η
)t
- - - (29)
(iii)
γ2
−
ω02
=0
の場合 (
γ=
ω0
: 臨界減衰)
一般解 :
x=
(
c1
+
c2t
)
e−γt
v=
dx
dt
=
{
c2
−γ(
c1
+
c2
t)
}
e−γt
初期条件より
x(0)
=
(
c1
+
0
)
e0
=c1
=x0
v(0)
=
{
c2
−γ
(
c1+0
)
}
e0
=c2
−γc1
=v0
⇒
c2=
x0γ
+v0
なので,初期条件を満たす解は次式となる.
x=
{
x0
+(
x0γ
+v0
)t
}
e−γt
- - - (30)
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