保存力 (conservative force)


図1 保存力のする仕事

物体に力を加えて移動させるとき,その力のする仕事が物体のたどる経路に関係なく,どの経路をたどっても同じ場合(つまり,経路の始点 (initial point) と終点 (terminal point) の位置のみで仕事が決まる場合),その力を保存力 (conservative force) という.位置エネルギーは保存力のする仕事により定義される(下記参照).

図1に示すように,物体に保存力 F c を加えて始点から終点まで3つの経路で移動させる場合,各経路における保存力のする仕事をそれぞれ W c 1 , W c 2 , W c 3 とすると,これらの仕事は経路によらず

W c 1 = W c 2 = W c 3

が成り立つ.また,物体に保存力を加えて移動させた経路の始点と終点が同じ(閉じた経路)であれば,その保存力のした仕事はゼロである.

保存力には,重力万有引力),ばねの弾性力静電気力磁気力などがある.一方,保存力ではない力(非保存力)には,動摩擦力空気抵抗などがある.


保存力のする仕事の例


図2 異なる2経路での重力のする仕事

保存力のする仕事の例として,図2に示すような水平面に固定された傾斜角 θ ,高さ h m の斜面台において,質量 m kg の小球が斜面上端の点 O から斜面下端の点 P に移動するときの,小球にはたらく重力のする仕事を考える.重力加速度の大きさを g m/s 2 とすると,斜面に沿って点 O から点 P まで移動する経路では,小球にはたらく重力の斜面方向成分が m g sin θ N であり,移動距離が h sin θ m なので,重力のする仕事は

W O P = m g sin θ h sin θ = m g h

である.一方,点 O から鉛直下向きにある点 Q を経由して点 P まで移動する経路では,点 O から点 Q までの重力のする仕事が m g h J で,点 Q から点 P までの重力のする仕事はゼロであるので,全仕事は

W O Q P = m g h + 0 = m g h

である.よって,これら2つの経路で重力のする仕事は変わらない.


保存力と位置エネルギーの関係

ある点における位置エネルギーは,保存力がその点から基準点までにする仕事により定義される.例えば,質量 m kg の物体が地面から高さ h m の位置にあるときの重力による位置エネルギー U J は,物体にはたらく重力が高さ h m の位置から地面までに物体にする仕事 m g h となる( g m/s 2 は重力加速度の大きさ).


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最終更新日2025年9月24日