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クリックで穴とゴールを配置し,エージェントが何百回も迷路を歩くうちに「どのマスが得か」を数値(値)として学んでいく様子を観察できるアプリの,しくみと数式の解説.
対象アプリ: 強化学習(最短ルート探索)
このアプリは,迷路の中を歩き回る1体のエージェントが,穴に落ちたりゴールに着いたりを繰り返す「試行錯誤」だけを頼りに,遠回りせずゴールへ着く道を自力で見つけ出す過程を可視化したものである.教科書的に式だけを追うのではなく,実際に数字(値)が盤面の上で動いていく様子を見ながら,次のことを体感できる.
| 状態 | 盤面上の1マス.7行×5列=35個ある.エージェントは常にどこか1マスに「いる」. |
| 行動 | 「左へ」「右へ」「下へ」の3つだけ.上へは戻れない(迷路は上から下へ一方向に進む構造になっている). |
| 報酬 | 1歩進むたびに小さな数(既定 ),穴に落ちると大きな罰(既定 ),ゴールに着くと大きなご褒美(既定 )を受け取る. |
盤面の一番端の列にいるときは「左」または「右」の一方が存在しない.そうした境界では,存在しない方向を最初から比較の対象から外す.次の図は,あるマス(状態)から見える3方向の候補を示したものである.
このアプリの値は,「行動ごとの価値」ではなく「そのマスに立つこと自体の価値」を表す1つの数値として,マスごとに1つだけ持たせている(迷路のように行動の結果が確定的に決まる問題では,この単純化でも十分に学習が進む).エージェントが実際にあるマス s' へ移動したとき,そのマスの値は次の式で更新される.
更新式(通常のマスへ移動したとき)
| 今回実際に移動して入ったマス.この式はこのマスの値だけを書き換える. | |
| (学習率) | 〜 の数.新しい経験をどれだけ強く反映するか.大きいほど直近の経験に素早く上書きされる. |
| (報酬) | に入った直後に得た報酬(通常は,穴なら ,ゴールならなど). |
| (割引率) | 〜 の数.まだ見ぬ「その先」の価値をどれだけ重視するか. に近いほど遠くのゴールも重視する. |
| からさらに進める左・右・下のマスのうち,最も値が高いもの.「その先にどれだけ期待できるか」の見積もり. |
穴に落ちた,またはゴールに着いた場合はそこでエピソードが終わり「その先」が存在しないため,max項をそのまま として扱う.
更新式(穴・ゴールなど終端に着いたとき)
この式は「今までの評価を だけ残しつつ,新しく得た手がかり(今回の報酬+その先の期待値)を だけ混ぜ込む」という,なめらかな上書き(移動平均)になっている.何百回も歩くうちに,ゴールに近いマスから順に値が実際の価値に近づいていく.
エージェントは,現在の状態から進める方向(左・右・下)のうち,値が最も高い方向を選んで進む(貪欲方策).同点の場合は 左 > 右 > 下 の優先順位で決める.
行動選択則
進む方向 = (左), (右), (下)
この方策には探索(exploration)がない.一般的な学習では,まれにわざとランダムな方向へ動く「ε-greedy」という仕組みを入れて,まだ知らない道を偶然にでも試せるようにする.このアプリにはその仕組みがなく,常にその時点で最も値が高い方向へ確定的に進む.
そのため,学習の初期にたまたま選ばれた道の評価がわずかにでも先に上がってしまうと,より短い別の道があってもそちらを二度と試さないまま学習が落ち着いてしまうことがある.実際に迷路を作って何度も学習をやり直し,必ずしも最短経路には収束しない場面を観察してみると,探索の大切さが実感できる.
| パラメータ | 大きくすると | 小さくすると |
| 学習率 | 直近の経験に素早く適応するが,値が振動しやすい | 変化がなめらかだが収束が遅い |
| 割引率 | 遠いゴールの価値も手前まで伝わりやすい | 目先の報酬だけを重視し,遠い価値が伝わりにくい |
| 1歩の報酬 | (マイナスを強めると)遠回りを強く嫌うようになる | 0に近づけると経路の長さに無頓着になる |
| 穴の罰 | 危険な列を強く避けるようになる | 穴のそばも平気で通るようになりうる |
| エージェント | 迷路の中を動く主体.このアプリでは常に1体だけ存在する. |
| 環境 | エージェントを取り巻く世界.ここでは迷路の盤面と,そのルール(穴に落ちるとどうなるか等). |
| 状態 | 環境のある一瞬の様子.ここでは「今どのマスにいるか」がそのまま状態になる. |
| 行動 | 状態に対してエージェントが選べる操作.ここでは左・右・下の3択. |
| 報酬 | 行動の直後に環境から与えられる数値の手がかり.良し悪しの唯一の情報源. |
| 方策 | 状態から行動を選ぶルール.このアプリは常に値最大の方向を選ぶ「貪欲方策」. |
| 価値関数 | 状態(や行動)の「割に合う度合い」を数値化したもの.このアプリの値がこれにあたる. |
| エピソード | スタートから穴かゴールに着くまでの一続きの試行.1回で終わり,また最初から始まる. |
この記事は 強化学習(最短ルート探索)アプリ の実装内容にもとづく解説であり,実際にアプリを操作しながら読むことを想定している.
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最終更新日:2026年7月17日