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n次正方行列Aにおいて,n個の相異なる固有値が存在するとき, Aは対角化可能である.
n次正方行列A のn 個の相異なる固有値を,λ1,λ2,λ3,・・・,λnとし,各固有値に対応するnの固有ベクトルを,x1 ,x2 , x3,・・・,xn とする.固有値・固有ベクトルの定義より
Axi=λixi (xi はλi に対応する固有値,i=1,2,3,⋯,n)・・・・・・(1)
の関係がある.
数学的帰納法により証明する.
k=1のとき,すなわち,1個の固有ベクトルx1のみのとき,
c′1x1=0 ・・・・・・(2)
とおく.
x1は固有ベクトルであることより,x1≠0である.よって,(1)が成り立つためには,
c′1=0
となり,
1個の固有ベクトルx1は1次独立ある. ・・・・・・(3)
k=m<nのとき,すなわち,m の固有ベクトル,x1 ,x2 , x3,・・・,xm のとき,
これらの固有ベクトルの組が1次独立であると仮定する. ・・・・・・(4)
k=m+1 のとき,すなわち,m+1 の固有ベクトル,x1 ,x2 , x3,・・・,xm,xm+1 のとき
c1x1+c2x2+c3x3+⋯+cmxm+cm+1xm+1=0 ・・・・・・(5)
とおく.(5)の両辺に左から A をかけると
c1Ax1+c2Ax2+c3Ax3+⋯+cmAxm+cm+1Axm+1=A0
となり,(1)より
c1λ1x1+c2λ2x2+c3λ2x3+⋯+cmλmxm+cm+1λm+1xm+1=0 ・・・・・・(6)
が得られる.次に,(5)の両辺に λm+1をかけると
c1λm+1x1+c2λm+1x2+c3λm+1x3+⋯+cmλm+1xm+cm+1λm+1xm+1=0 ・・・・・・(7)
(7)−(6)より
c1(λm+1−λ1)x1+c2(λm+1−λ2)x2+c3(λm+1−λ3)x3+⋯+cm(λm+1−λm)xm=0 ・・・・・・(8)
が得られる.m 個の固有ベクトル,x1 ,x2 , x3,・・・,xm の組が1次独立であるので,(8)が成り立つためには
c1(λm+1−λ1)=c2(λm+1−λ2)=c3(λm+1−λ3)=⋯=cm(λm+1−λm)=0
でなければならない.n 個の固有値は相異なるので,λm+1−λi≠0 (i=1,2,3,⋯,m )である.よって
c1=c2=c3=⋯=cm=0 ・・・・・・(9)
となる.(9)を(5)に代入すると
cm+1xm+1=0 ・・・・・・(10)
となる.xm+1≠0 より
cm+1=0 ・・・・・・(11)
となる.(9),(11)より,(5)が成り立つためには,(5)の左辺の xi (i=1,2,3,⋯,m,m+1 )の係数がすべてゼロになる.すなわち
(4)の仮定においては,m+1 の固有ベクトル,x1 ,x2 , x3,・・・,xm,xm+1の組は1次独立となる.
以上より,A が n 個の相異なる固有値が存在するとき,m の固有ベクトル,x1 ,x2 , x3,・・・,xk の組は1次独立である.ただし,k=1,2,3,⋯,nである.
すなわち,n次正方行列Aにおいて,n個の相異なる固有値が存在するとき,1次独立な n個の固有ベクトルが存在する.
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最終更新日:2022年7月19日