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n 次元実ベクトル空間 Rn の任意のベクトルの成分表示
a=(a1a2⋮an) --- (1)
は基本ベクトル {e1, e2, ⋯, en} を用いて,基本ベクトル表示
a=a1e1+a2e2+⋯+anen --- (2)
で表すことができ,(1) の表記は (2) の係数の組 (a1, a2, ⋯, an) でもってベクトルを表す方法とみることができる. {e1, e2, ⋯, en} は Rn の基底の一つであり,ベクトル a を別の任意の基底 {e′1, e′2, ⋯, e′n} を用いて同様に
a=a′1e′1+a′2e′2+⋯+a′ne′n --- (3)
と表すこともできる.ここで, {e′1, e′2, ⋯, e′n} は正規直交基底である必要はない.このように基底を取り替えた場合,ベクトル a を表す際に係数の組 (a′1, a′2, ⋯, a′n) で (1) と同じ成分表示の表記を使うというのは紛らわしいので,(2) や (3) の行列表現を用いて,
a=a1e1+a2e2+⋯+anen
=(e1e2⋯en)(a1a2⋮an)
=a′1e′1+a′2e′2+⋯+a′ne′n
=(e′1e′2⋯e′n)(a′1a′2⋮a′n)
--- (4)
というように,係数の n×1 行列の前に基底の n×n 行列をかけて表すことで基底を明示し区別すると,どういう基底を用いているか分かりやすい.
基底 {e1, e2, ⋯, en} から別の基底 {e′1, e′2, ⋯, e′n} への変換を行列 T を用いて
(e′1e′2⋯e′n)=(e1e2⋯en) T --- (5)
のように表すことにすると,この変換行列 T は
T=(e1e2⋯en)−1 (e′1e′2⋯e′n) --- (6)
である.今の場合, {e1, e2, ⋯, en} は基本ベクトルなので, T=E−1(e′1e′2⋯e′n) =(e′1e′2⋯e′n) となる.(4) の関係から
(e1e2⋯en)(a1a2⋮an)=(e1e2⋯en) T T−1 (a1a2⋮an) =(e′1e′2⋯e′n)(a′1a′2⋮a′n)
であるので,係数 (a1, a2, ⋯, an) と係数 (a′1, a′2, ⋯, a′n) の間に1次変換
(a′1a′2⋮a′n)=T−1 (a1a2⋮an) ⇔ (a1a2⋮an)=T (a′1a′2⋮a′n) --- (7)
の関係があることが分かる.
次に, Rn から Rn への線形写像 f:Rn→Rn を考え,この線形写像によって b=f(a) と変換されるとする.f の表現行列を A とすると
b=(b1b2⋮bn) =A (a1a2⋮an) --- (8)
であるが,これを (4) のように基底を明示して表記すると,
b=b1e1+b2e2+⋯+bnen =(e1e2⋯en)(b1b2⋮bn) =(e1e2⋯en) A (a1a2⋮an) --- (9)
となる.右辺において (5),(7) を用いると
(e1e2⋯en) A (a1a2⋮an) =(e′1e′2⋯e′n) T−1AT (a′1a′2⋮a′n) --- (10)
であり, b を別の基底 {e′1, e′2, ⋯, e′n} で表記すると,
b=b′1e′1+b′2e′2+⋯+b′ne′n =(e′1e′2⋯e′n)(b′1b′2⋮b′n) --- (11)
であることから
(b′1b′2⋮b′n)=T−1AT (a′1a′2⋮a′n) --- (12)
の関係があることが分かる.
以上のことから,基底の変換
(e′1e′2⋯e′n)=(e1e2⋯en) T
により,基底 {e1, e2, ⋯, en} において (a1a2⋮an) と表されるベクトルは,別の基底 {e′1, e′2, ⋯, e′n} においては T−1 (a1a2⋮an) で表され,基底 {e1, e2, ⋯, en} における線形写像の表現行列 A は,基底 {e′1, e′2, ⋯, e′n} において T−1AT と表されることがわかる.このことは,変換元の基底が基本ベクトル {e1, e2, ⋯, en} でなくとも一般的に成り立つことである.
最終更新日: 2023年2月9日