物体の落下運動と空気抵抗
地上から
3.0 m
の高さの位置から,質量
m 〔kg〕
の羽と質量
100m
〔kg〕
の鉄球を同時に落下させた.空気抵抗を無視するとき,次の問いに答えよ.
(1)
羽と鉄球はどちらがはやく落下するか.または同時に落下するか.
解答
解説
空気抵抗を無視するので,真空中の運動と考えることができる.真空中で落下する物体にはたらく力は重力のみであり,物体の質量を
M 〔kg〕
,運動の加速度を
a 〔
m/s
2
〕
,また重力加速度をg 〔m/s2〕とすると,運動方程式は
Ma=Mg
となる.つまり
a=g
とできるので,物体が落下する加速度は物体の質量とは無関係である.したがって質量が異なる物体でも同じように落下する.
参考:「真空中における自由落下」実験動画
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(2)
鉄球が落下開始点から
1.4 m
落下するのに
0.535 s
かかることが測定から分かった.このときの重力加速度はいくらになるか.上の測定結果から計算せよ.
解答
解説
物体は初速度
v
0
=0m/s
で落下するので,この運動は自由落下である.
y=
1
2
g
t
2
に
y=1.4
,
t=0.535
を代入すると,
g=
2y
t
2
=
2⋅1.4
0.535
2
=9.78≒9.8
m/s
2
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次に,空気抵抗として,物体の速度
v 〔m/s〕
に比例した粘性抵抗力が落下の向きとは逆向きに働いている場合を考える.ただし重力加速度として
g 〔
m/s
2
〕
を用いる.
(3)
羽に対する運動方程式を示せ.ただし,羽にはたらく粘性抵抗力の大きさは比例定数を
k
として,
kv 〔N〕
とする.
解答
解説
羽が落下しているときの,ある時刻
t 〔s〕
における瞬間の加速度
a(t) 〔
m/s
2
〕
は
dv
dt
で表すことができる.また,羽がある速度
v 〔m/s〕
で落下しているときの,羽にはたらく力は右の図2のようになる.
これらより,羽に対する運動方程式は,
m
dv
dt
=mg−kv
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(4)
十分に長い時間,羽が落下し続けた.そのときの羽は最終的にどういう運動に落ち着くか.
解答
解説
十分に長い時間,羽が落下したときの羽の速度は,
lim
t→∞
v(t)
である.
(3)
より,運動方程式は
m
dv
dt
=mg−kv
である.
これを変数で分離した形に変形すると,
m
k
dv
dt
=
mg
k
−v
つまり,
dv
mg
k
−v
=
k
m
dt
両辺を積分すると,(置換積分法を用いた公式1を用いる.←この公式の使い方の例)
∫
dv
mg
k
−v
=
∫
k
m
dt
−
∫
(
mg
k
-v
)
'
mg
k
-v
dv=
∫
k
m
dt
−log|
mg
k
−v |=
k
m
t+C
log|
mg
k
−v |=−
k
m
t−C
|
mg
k
−v |=
e
−
k
m
t−C
|
mg
k
-v |=
e
-
k
m
t
⋅
e
-C
v(t)
において,
v=0
のとき
t=0
である.このとき,
e
0
=1
より,
e
−C
=
mg
k
となる.
よって,
v(t)=
mg
k
(1−
e
−
k
m
t
)
これは速度
v
と時間
t
の関係式である.
十分に長い間,羽が落下したときの速度
lim
t→∞
v(t)
を求める.
ここで,
lim
t→∞
e
−
k
m
t
=
lim
t→∞
(
1
e
)
k
m
t
であり,ネイピア数
e=2.71⋅⋅⋅
より,
1
e
<1
であるから,指数関数の概形を考えると,
lim
t→∞
(
1
e
)
k
m
t
=0
である.
したがって,
lim
t→∞
v(t)=
mg
k
(1−0)=
mg
k
〔m/s〕
である.
mg
k
は定数であるので,羽は一定の速度で落下するといえる.
(詳しい解き方はKIT数学ナビゲーションへ→変数分離形微分方程式)
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(5)
落下開始時直後では,羽の速度はどのような振る舞いに近いか.
解答
解説
v(t)=
mg
k
(1−
e
−
k
m
t
)
の式をグラフで表すと右図の赤い曲線のようになる.
空気抵抗がない場合の自由落下は加速度
g
の等加速度直線運動なので,右図の直線
v=gt
のようになる.図より,落下開始直後の
t=0
付近では自由落下の振る舞いに近い.
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2020年9月4日
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