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2次曲線の標準化の定理1の証明

2次曲線の標準化における【定理 1】有心の場合の標準化 を証明する.

xy 平面上の2次曲線を表す式

u(x,y)= ax2 +2bxy +cy2 +2dx+2ey+f =0 ,   (a,b,c) (0,0,0)     ······ 

の係数を成分とする2つの対称行列

A= ( ab bc )     ······ 

A˜= ( abd bce def )     ······ 

および,それらの行列式

Δ=|A| =acb2     ······ 

Δ˜ =|A˜| = (acb2)f (aebd)e (cdbe)d     ······ 

を考え, Δ0 とする.以下の手順で【定理 1】を証明する(各手順の行をクリックすると解説欄が開く).

【手順 1】 Δ0 のときに有心であることを示す

行列 A 固有方程式

|AλE| = | aλb bcλ |
|AλE| = (aλ) (cλ) b2
|AλE| = λ2 (a+c)λ +acb2
|AλE| = λ2 (a+c)λ +Δ =0     ······ 

より, Δ0 のときに A ゼロでない 2つの固有値 λ1 , λ2 をもつ.それらに対応する大きさ 1 固有ベクトル p1 , p2 から得られる直交行列 P= ( p1 p2 ) により, A

D= PtAP = ( λ10 0λ2 )     ······ 

と対角化される.行列 A と列ベクトル x = ( x y ) を用いて,式

u(x)= xt Ax +2 ( de ) x +f =0     ······ 

と表すと,直交変換 x= PX =P ( XY ) により,式の右辺第1項の2次形式

xt Ax = (PX)t A (PX)
xt Ax = Xt Pt APX
xt Ax = Xt D X
xt Ax =λ1X2 +λ2Y2     ······ 

となる(2次形式の標準化).このように,異なる2つの変数の積が消えるように式を標準化すると, λ1 , λ2 はゼロはないので, X2 Y2 の項が必ず存在し,楕円双曲線の標準形に帰着する.したがって, Δ0 のとき,式の2次曲線には(退化する場合も含めて)中心点が存在し,有心であることがわかる.


【手順 2】 平行移動により1次の項を消去する

次に,式 x , y の1次の項を消去するために,以下の平行移動

{ x=xx0 y=yy0     ······ 

を考える.これは点 (x0,y0) が原点となるようにグラフを平行移動することに対応する. x0 , y0 を求めるため

{ x=x+x0 y=y+y0     ······ 

を式に代入すると

u ( x+x0, y+y0 ) = a(x+x0)2 +2b (x+x0) (y+y0) +c(y+y0)2 +2d(x+x0) +2e(y+y0)+f
u ( x+x0, y+y0 ) = ax2 +2bxy +cy2 +2 { ( ax0+by0+d ) x + ( bx0+cy0+e ) y }
u ( x+x0 y+y0 ) +ax02 +2bx0y0 +cy02 +2dx0 +2ey0 +f
u ( x+x0 y+y0 ) = ax2 +2bxy +cy2 +2 { ( ax0+by0+d ) x + ( bx0+cy0+e ) y } +u(x0,y0)
u ( x+x0 y+y0 ) =0     ······ 

となり, x , y の1次の項が消えるためには,それらの係数が

{ ax0+by0+d=0 bx0+cy0+e=0     ······ 

でなければならない.上式を行列表示すると

A ( x0y0 ) = ( de )     ······ 

となる. Δ0 より, A 逆行列が存在し, x0 , y0

( x0y0 ) =A1 ( de )     ······ 

と求まる.これにより,列ベクトル x = ( x y ) を用いて,式

xt Ax +u(x0,y0) =0     ······ 

という 2次形式 xt Ax + 定数項 u(x0,y0) の形で表せる.また,このようにして求めた点 (x0,y0) は,2次曲線(楕円・放物線)の中心点となっており,この平行移動によって中心点が原点に移動する.


【手順 3】 直交変換により標準形に変換する

次に,平行移動した点 x に対して,直交行列 P による直交変換

X= Pt x     ······ 

を考える. x= PX を式に代入すると

xt Ax +u(x0,y0) = (PX)t A (PX) +u(x0,y0)
xt Ax +u(x0,y0) = Xt Pt APX +u(x0,y0)
xt Ax +u(x0,y0) = Xt D X +u(x0,y0)
xt Ax +u(x0,y0) =λ1X2 +λ2Y2 +u(x0,y0) =0     ······ 

となり,式の標準形が得られる( D= Pt AP は式の対角行列 ).また,

A1= 1Δ ( cb ba )     ······ 

および,式より

u(x0,y0)= ( x0y0 ) A ( x0 y0 ) +2 ( de ) ( x0 y0 ) +f
u(x0,y0) = ( de ) A1AA1 ( de ) 2 ( de ) A1 ( de ) +f
u(x0,y0) = ( de ) A1 ( de ) +f
u(x0,y0) =f 1Δ { (aebd)e + (cdbe)d }     ······ 

となるので,式と見比べると

u(x0,y0)= Δ˜Δ     ······ 

であることがわかる.


【手順 4】 まとめ
楕円の平行移動と回転

双曲線の平行移動と回転
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有心( Δ0 )である2次曲線の中心点 (x0y0) が原点となるように平行移動【手順 2】した後,行列 A を対角化する直交行列 P によって直交変換【手順 3】させる座標変換

( X Y ) = Pt ( xx0 yy0 )     ······ 

により,式は標準形

λ1X2 +λ2Y2 +u(x0,y0) =0     ······ 

に変換できる.ここで, λ1 , λ2 は行列 A のゼロでない固有値である.

A の固有値に対応する固有ベクトルから成る直交行列 P は固有ベクトルの符号の取り方で任意性をもつが, |P|=1 となるように

P= ( p1p2 p2p1 )     ······ 

のようにとると, P による直交変換を回転移動に対応付けることができる( |P|=1 のときは軸に関する対称移動を伴う).

したがって,幾何学的に考えると,2次曲線の標準化とは,平行移動と回転移動により, xy 座標系から XY 座標系に軸を取り直して,式を見通しの良い形にすることである.

※ 上記手順では平行移動してから直交変換(回転移動)しているが,直交変換してから平行移動しても構わない.その際の座標変換は

( X Y ) = Pt ( x y ) ( X0 Y0 ) = Pt ( x y ) Pt ( x0 y0 )

であり,実質,式と同じである.


【補足】 同次座標による表現

平行移動と直交変換を表す式を書き直すと

   ⇒    ( x y ) =P ( XY ) + ( x0 y0 )     ······ 

となり,これを同次座標を用いたアフィン変換で表すと

( xy 1 ) = ( P x0 y0 00 1 ) ( XY 1 )     ······ 

のように,直交変換と平行移動をまとめて1次変換のように表すことができる.このとき列ベクトルの3番目の成分は必ず 1 となる.上式右辺の3次正方行列を

P ˜ = ( P x0 y0 00 1 )     ······ 

とおくことにする.このアフィン変換の表現を用いると,式

u(x,y)= ( xy1 ) ( abd bce def ) ( xy1 ) = ( xy1 ) A˜ ( xy1 ) =0     ······ 

と表すことができるため,1次の項や定数項を含めて,あたかも2次形式の行列表示のように表記できる.ここで, P˜t A˜ P˜ を計算すると

P˜t A˜ P˜ = ( Pt 00 x0y0 1 ) ( A de de f ) ( P x0 y0 00 1 )
P˜t A˜ P˜ = ( Pt 00 x0y0 1 ) ( AP A ( x0 y0 ) + ( de ) ( de ) P ( de ) ( x0 y0 ) +f )
P˜t A˜ P˜ = ( PtAP Pt { A ( x0 y0 ) + ( de ) } { ( x0y0 ) A + ( de ) } P ( x0y0 ) A ( x0 y0 ) + 2 ( de ) ( x0 y0 ) +f )
P˜t A˜ P˜ = ( D 00 00 u(x0,y0) )     ······ 

である(上式の最終行では式を用いた).したがって,式に式を代入し,式を用いると,

( xy1 ) A˜ ( xy1 ) = ( XY1 ) P˜t A˜ P˜ ( XY1 )
( xy1 ) A˜ ( xy1 ) = ( XY1 ) ( D 00 00 u(x0,y0) ) ( XY1 )
( xy1 ) A˜ ( xy1 ) = λ1X2 +λ2Y2 +u(x0,y0) =0     ······ 

を得る.このように同次座標の表現を用いると平行移動を含めて1次変換として扱えるので,式展開がスッキリする.

ただし, P˜ は直交行列ではないので, P˜t P˜ E P˜ P˜t E である.ちなみに, |P˜| =|P| =±1 なので, | P˜t A˜ P˜ | =|A˜| =Δ˜ であり,行列 P˜ によるアフィン変換で判別式は不変である.実際,式より

| P˜t A˜ P˜ | = |D| u(x0,y0) =Δ Δ˜Δ =Δ˜     ······ 

である.


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最終更新日:2025年10月16日

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