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2次曲線の標準化の定理2の証明

2次曲線の標準化における【定理 2】無心の場合の標準化 を証明する.

xy 平面上の2次曲線を表す式

u(x,y)= ax2 +2bxy +cy2 +2dx+2ey+f =0    (a,c0)     ······ 

の係数を成分とする2つの対称行列

A= ( ab bc ) ,   A˜= ( abd bce def )     ······ 

を考える. A の行列式を

Δ=|A| =acb2 =0     ······ 

とすると, A˜ の行列式は

Δ˜ =|A˜| Δ˜ = (acb2)f (aebd)e (cdbe)d
Δ˜ = (aebd)e (b2adbe)d
Δ˜ = (aebd)e +(aebd)bda
Δ˜ = (aebd)2a     ······ 

である( c=b2/a を用いた).

(※ 式において a=0 または c=0 の場合,無心であれば式より b=0 なので,既に標準化されている.)

以下の手順で【定理 2】を証明する(各手順の行をクリックすると解説欄が開く).

【手順 1】 Δ=0 のときに無心であることを示す

行列 A 固有方程式

| AλE | = | aλb bcλ |
| AλE | = (aλ) (cλ) b2
| AλE | = λ2 (a+c)λ +acb2
| AλE | = λ2 (a+c)λ
| AλE | = λ {λ(a+c)} =0     ······ 

より, Δ=0 のとき A の2つの固有値 λ1 , λ2 のうち片方は ゼロとなる.それらを

λ1=0  ,   λ2=λ=a+c0     ······ 

とすると,対応する大きさ 1 固有ベクトル

p1 = ±1 a2+b2 ( b a )  ,   p2 = ±1 a2+b2 ( ab )     ······ 

となる(複合任意).式から得られる直交行列 P= ( p1 p2 ) は符号の任意性をもつが, |P|=1 となるよう

P= 1 a2+b2 ( ba ab )     ······ 

とおくと, P による直交変換は回転変換に対応付けられる.行列 A P により

D= PtAP = ( 00 0λ )     ······ 

と対角化され, A と列ベクトル x = ( x y ) を用いて,式

u(x)= xt Ax +2 ( de ) x +f =0     ······ 

と表すと,直交変換 x= PX =P ( XY ) により,式の右辺第1項の2次形式

xt Ax = (PX)t A (PX)
xt Ax = Xt Pt APX
xt Ax = Xt D X
xt Ax =λY2     ······ 

となる(2次形式の標準化).このように,異なる2つの変数の積が消えるように式を標準化すると, λ1=0 なので, X2 の項が消える( λ2=0 とおくと Y2 の項が消える).したがって,式放物線の標準形に帰着するため, Δ=0 のとき,式の2次曲線には(退化する場合も含めて)中心点が存在せず,無心であることがわかる.


【手順 2】 平行移動と直交変換により標準形に変換する

【定理 1】の証明と同様に,平行移動と式の直交行列 P による直交変換

X= ( X Y ) = Pt ( xx0 yy0 )     ······ 

を用いて,式を標準形に変換する.【手順 1】より,この直交変換では X2 の項が消えるので,平行移動では Y の1次の項が消えるように x0 , y0 を決める.式より

x= ( x y ) = P X + ( x0 y0 )     ······ 

であり,これを式に代入すると

u(x)= xt Ax +2 ( de ) x +f
u(x) = ( PX+ ( x0 y0 ) ) t A ( PX+ ( x0 y0 ) ) +2 ( de ) ( PX+ ( x0 y0 ) ) +f
u(x) = ( X+ Pt ( x0 y0 ) ) t Pt AP ( X+ Pt ( x0 y0 ) ) +2 ( de ) ( PX+ ( x0 y0 ) ) +f
u(x) = Xt DX + Xt D Pt ( x0 y0 ) + ( x0y0 ) PDX +2 ( de ) PX
u(x) + ( x0y0 ) A ( x0 y0 ) +2 ( de ) ( x0 y0 ) +f
u(x) = Xt DX + ( ( x0y0 ) PDX ) t + ( x0y0 ) PDX +2 ( de ) PX +u(x0,y0)
u(x) =λY2 +2 { ( x0y0 ) PD + ( de ) P } X +u(x0,y0)     ······ 

となる( D= Pt AP は式の対角行列).ここで,上式第2項の{ }内の項は,それぞれ

( x0y0 ) PD = ( x0y0 ) 1 a2+b2 ( ba ab ) ( 00 0λ )
( x0y0 ) PD = 1 a2+b2 ( x0y0 ) ( 0λa 0λb )
( x0y0 ) PD = 1 a2+b2 ( 0 λ ( ax0+by0 ) )     ······ 


( de ) P = ( de ) 1 a2+b2 ( ba ab )
( de ) P = 1 a2+b2 ( bdaead+be )     ······ 

となるので,第2項は

2 { ( x0y0 ) PD + ( de ) P } X
= 2 a2+b2 ( bdae λ ( ax0+by0 ) +ad+be ) ( X Y )
=2 aebd a2+b2 X + 2 a2+b2 ( ab ) ( λx0+d λy0+e ) Y     ······ 

と書ける.したがって,式

λY2 2 aebd a2+b2 X + 2 a2+b2 ( ab ) ( λx0+d λy0+e ) Y +u(x0,y0) =0     ······ 

と表される.上式において, Y の1次の項を消すには内積 (ab) ( λx0+d λy0+e ) =0 であればよいので, x0 , y0

( λx0+d λy0+e ) = k ( ba )   ( k :任意定数)     ······ 

を満たせばよい.

放物線の平行移動と回転
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k は任意なので, k=0 と選ぶと,

( x0y0 ) = 1λ ( de )     ······ 

となる(このように求めた点 (x0,y0) は対称軸上の点であるが,放物線の焦点でも, u(x0,y0) =0 でなければ頂点でもない).このとき,

g= aebd a2+b2     ······ 

とおくと,式は次式の標準形となる.

λY2 2gX +u(x0,y0) =0     ······ 

ここで,

u(x0,y0) = ( x0y0 ) A ( x0y0 ) + 2 ( de ) ( x0y0 ) +f
u(x0,y0) = 1λ2 ( de ) A ( de ) 2λ ( de ) ( de ) +f
u(x0,y0) = 1λ2 ( ad2+2bde+ce2 ) 2λ(d2+e2) +f
u(x0,y0) =a ( ad+be a2+b2 ) 2 2a d2+e2 a2+b2 +f     ······ 

である(上式の最終行で λ=a+c , c=b2/a を用いた).また,式において, g=0 のとき X の1次の項が消え,2次曲線は放物線ではなく,退化して平行な2つの直線となる.式と式を見比べてわかるように, g=0 のとき Δ˜=0 である.


【補足 1】 同次座標による表現

座標変換の式を,同次座標を用いたアフィン変換で表すと

( xy 1 ) = ( P x0 y0 00 1 ) ( XY 1 )     ······ 

のように,直交変換と平行移動をまとめて1次変換のように表すことができる.このとき列ベクトルの3番目の成分は必ず 1 となる.上式右辺の3次正方行列を

P ˜ = ( P x0 y0 00 1 )     ······ 

とおくことにする.この同次座標の表現を用いると,式

u(x,y)= ( xy1 ) ( abd bce def ) ( xy1 ) = ( xy1 ) A˜ ( xy1 ) =0     ······ 

と表すことができるため,1次の項や定数項を含めて,あたかも2次形式の行列表示のように表記できる.ここで, P˜t A˜ P˜ を計算すると,

P˜t A˜ P˜ = ( Pt 00 x0y0 1 ) ( A de de f ) ( P x0 y0 00 1 )
P˜t A˜ P˜ = ( Pt 00 x0y0 1 ) ( AP A ( x0 y0 ) + ( de ) ( de ) P ( de ) ( x0 y0 ) +f )
P˜t A˜ P˜ = ( PtAP Pt { A ( x0 y0 ) + ( de ) } { ( x0y0 ) A + ( de ) } P ( x0y0 ) A ( x0 y0 ) + 2 ( de ) ( x0 y0 ) +f )
P˜t A˜ P˜ = ( D g0 g0 u(x0,y0) )     ······ 

である(式より D= Pt AP ).上式の最終行では,式および λ=a+c =(a2+b2) /a を用いて

Pt { A ( x0 y0 ) + ( de ) } = 1λ Pt ( λEA ) ( de )
Pt { A ( x0 y0 ) + ( de ) } = 1λ 1 a2+b2 ( ba ab ) ( cb ba ) ( de )
Pt { A ( x0 y0 ) + ( de ) } = 1λ 1 a2+b2 ( (a+c)b (a2+b2) acb20 ) ( de )
Pt { A ( x0 y0 ) + ( de ) } = 1 a2+b2 ( ba 00 ) ( de )
Pt { A ( x0 y0 ) + ( de ) } = 1 a2+b2 ( bdae0 ) = ( g0 )     ······ 

と求めた.したがって,式に式を代入し,式を用いると,

( xy1 ) A˜ ( xy1 ) = ( XY1 ) P˜t A˜ P˜ ( XY1 )
( xy1 ) A˜ ( xy1 ) = ( XY1 ) ( D g0 g0 u(x0,y0) ) ( XY1 )
( xy1 ) A˜ ( xy1 ) = λY2 2gX +u(x0,y0) =0     ······ 

を得る.このようにアフィン変換の表現を用いると平行移動を含めて1次変換として扱えるので,式展開がスッキリする.

ただし, P˜ は直交行列ではないので, P˜t P˜ E P˜ P˜t E である.ちなみに, |P˜| =|P| =±1 なので, | P˜t A˜ P˜ | =|A˜| =Δ˜ であり,行列 P˜ によるアフィン変換で判別式は不変である.実際,式より

| P˜t A˜ P˜ | = λg2 = a2+b2a (aebd)2 a2+b2 = (aebd)2 a =Δ˜     ······ 

である.


【補足 2】 平行移動の任意性について

を標準形に変換する際,【手順 2】の式において Y の1次の項を消すために,式を満たすように平行移動の量 (x0,y0) を決めるのであるが, k の任意性があり,最も簡単な場合として k=0 を選んだ.幾何学的には,式を満たす点 (x0,y0) は放物線(退化するときは平行な2直線)の対称軸上の点である.(※ k=0 を選ぶと,退化したときの対称軸に原点から垂線を下したときの交点となる.)

このように平行移動には任意性があるが,放物線の場合( Δ˜0 ),最初から原点が頂点となるような平行移動により標準化できる.つまり,式において,式 u(x0,y0) =0 を同時に満たす x0 , y0 を求めれば,点 (x0,y0) が一意に定まり,その点が式における放物線の頂点の座標を表している.

放物線の頂点の座標を,式 (x0,y0) と区別して (x1,y1) とおくと,式より

( x1y1 ) = 1λ { k ( ba ) ( de ) }     ······ 

となり,これを u(x1,y1) =0 に代入し,

A ( ba ) = ( ab bc ) ( ba ) = ( 0b2ac ) = ( 00 )

であることを用いると

u(x1,y1) = ( x1y1 ) A ( x1y1 ) + 2 ( de ) ( x1y1 ) +f
u(x1,y1) = 1λ2 { k ( ba ) ( de ) } A { k ( ba ) ( de ) } + 2λ ( de ) { k ( ba ) ( de ) } +f
u(x1,y1) = 1λ2 ( de ) A ( de ) 2λ ( de ) ( de ) +f +2kλ ( de ) ( ba )
u(x1,y1) = u(x0,y0) 2kλ(aebd) =0     ······ 

となる(上式の最終行で式を用いた).

頂点を原点に移動する平行移動
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したがって,

k= λu(x0,y0) 2(aebd)     ······ 

を得る.これを式に代入して頂点の座標 (x1,y1) が求まり,座標変換

X= ( X Y ) = Pt ( xx1 yy1 )     ······ 

で,式

λY2 2gX =0     ······ 

と変換される.ただし,式のように複雑な式となるので, k=0 を選ぶ方が簡単である.


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最終更新日:2025年10月17日

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